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■NICUの役割とは?


ご存知のとおり「NICU」は「Neonatal Intensive Care Unit」の略称です。日本語では、
「新生児集中治療室」と呼ばれ、生まれたばかりの新生児を保管・処置する部署です。


新生児は、すでにある程度成長した子どもとは異なる特徴が沢山あります。


未熟児だけでなく何らかの疾患を患った状態で生まれて来るケースも少なくありません。


しかも身体や内臓器官は非常に小さいので、治療に関しても医師の先生が実際に使用する
各種医療機器や器具などは非常に特殊なので、どうしても専門的知識が必要となります。


そして、ここ最近の傾向としては生まれてからすでに1年以上経過しているにも関わらず、
NICUに入院されているケースが増えていることから、ベッド数が不足しています。


こうした問題に比例する恰好で専門医が不足しているため、現場の最前線で対応する医師
や看護師さんの負担は増える一方であるため、看護師さんの仕事は非常にハードです。


出産はママと赤ちゃんの二人三脚で行われるわけですが、実際に分娩が行われる前後には、
色々なストレスに襲われるため、肉体的にも精神的にも不安定な状態になります。


このため医師や看護師は母親と赤ちゃんの二人をケアしなければなりません。


実際にご覧になったことがあるかと思いますが、NICUには、沢山の保育器が並んでいます。
赤ちゃんの中には「新生児呼吸障害」を患うケースも少なくありません。


呼吸が非常に不安定な状態にあるため、点滴や鼻に呼吸を補助するための呼吸補助器具と
酸素濃度を計測する器具と心電図をつけて酸素と心拍数をモニターします。





■NICUで働く看護師の仕事とは?


自分の子供がNICUに送られたと聞かされると、大抵のママさんはパニックに陥りますので、
この点に関しては、余計な不安を与えないように、きちんと説明しなければなりません。


出産直後の心と身体には辛いですから、精神面でのケアが非常に重要です。


基本的にNICUの設備を設置および維持するには膨大な費用と大きなスペースが必要なので、
大学病院や総合病院など、ある程度規模が大きな病院でなければ運営できません。


NICUは、小児科、産科など複数の診療科と垣根を超えた連携によって赤ちゃんとママの命
を守っているところが多いので、どうしてもコミュニケーション能力が必要です。


また、業務を円滑に進めるためにも常に幅広い専門知識を学ばなければなりません。


中でも新生児の病態理解、急性期看護、新生児看護の知識や技術などは重要です。


実際にNICUで働いている看護師さんは、新生児だけでなく母体もしっかりケアできるよう
になるための努力を強く求められます。そうしないと対応できないからです。


新生児は泣きながら身体を動かしていても、内臓器官の働きが非常に不安定である場合が、
多いので、ちょっとした判断の誤りが大きな医療事故につながりかねません。


保育器の中で成長を見守り続けなければならない新生児の看護は本当に大変です。


NICUで治療を受けている赤ちゃんは、自力で呼吸したり栄養を摂取できないケースが多い
ので、人工呼吸器や栄養チューブ、各種点滴などによってケアしていきます。


このさいNICUの看護師さんは最新の注意を払いながら新生児達の経過を観察し、辛抱強く
成長を見守らなければなりません。同時進行で色々やらなければならないので大変です。


新生児は症状の急変も早いので、新生児の看護ケアはミスが許されません。


このため、どうしても一段上の医療・看護に関する知識や技術を身につけなければなりま
せんので、逆に言うとこうした点がNICUで働く、大きなメリットの一つとなります。





■NICUで看護師として働く注意点とは?


NICUでは、赤ちゃんのケアだけでなく、母親の精神的ケアも非常に重要な仕事です。


また最近では赤ちゃんと母親の距離がどんどん開いてしまっていますので、その間を取り
繕わなければ、赤ちゃんの大切な命を守れない状況になっています。


どういうことかといいますと、例えば生活苦などを理由に在宅での看護ができないケース
が増えているため、病院側が率先してサポートしないと親子の関係を維持出来ません。


悲しいことに、不妊治療を長期間に渡って行っているにもかかわらず、子供に恵まれない
夫婦がいる一方で、勢いに任せて妊娠・出産されるケースも少なくありません。


繰り返しになりますが産後の母親は、生まれたばかりの赤ちゃんがNICUに送られることを
聞かされると強く動揺します。心も身体も不安定な状態で心配しなければなりません。


また初産の母親の場合、何かな何まで初めてのことだらけなので、順調に赤ちゃんが回復
しているにもかかわらず、退院後のことを考えて不安になるケースが少なくありません。


ようは「自分なんかが本当に母親になれるのか?」「大変な子育てなんかできるのか」、
といったことを必要以上に考えてしまい、色々と不安になってしまうのです。





■母親への精神的ケアが非常に重要


年々シングルマザーが増えており、2010年の段階で100万人を超えています。


しかも、未婚でシングルマザー(全体の10%超)になってしまうケースが増えてます。


このため出来るだけ母親の不安な思いを軽減するためにNICUの看護師さんは精神的なケア
をしたり、育児に関する幅広い知識や技術のサポートも大事な仕事です。


本来であれば、こうした取り組みは病院側がやることではないかもしれません。しかし、
そうしないと、母親になることを拒絶するケースが増えているので、仕方ありません。


基本的にNICUは、早産の未熟児や何らかの疾患を持ったまま産まれてきた赤ちゃんを治療
する病棟で、医療機器や医療技術の発達が目覚ましい診療科の一つとされています。


しかし、どんなにこういったNICUを取り巻く環境が進化しても、流産や死産、新生児期の
死は毎年必ず起こってしまいます。そうなれば悲しみに暮れる人たちも出てきます。


このような強い心の痛みは、実際に体験されたその家族にしか分からないものです。


一番距離が近いのが看護師さんですから、ご家族の悲しみや怒りといった思いを直接ぶつ
けられることもあります。そして、それらの思いを受け止めなければなりません。