■訪問看護師とは?
訪問看護師は、「訪問看護ステーション」に所属する看護師さんのことです。
基本的に訪問看護ステーションは、病院に併設されているタイプと個人が経営している
タイプの二種類あるのですが、いずれも訪問看護師さんの数が全く足りていません。
また、数年の間で訪問看護師の数が増えていないのも問題視されています。
このため訪問看護ステーションでは、臨床経験のある看護師さんの需要が非常に大きい
ため、やる気さえあれば、いつでも「即戦力」として歓迎される状態にあります。
訪問看護師さんは、すでに病院を退院し、自宅で療養中の慢性期の患者さんをケアする
のが主な仕事でして、病棟勤務よりも患者さんと密接な関係を築きながら看護します。
病棟では業務効率を最大限に高めることを求められるので、病院側の患者さんに対する
姿勢や対応に不満を感じていた看護師さんにとっては、大変やり甲斐のある仕事です。
しかし最近は患者さんの高齢化が急速に進み、対応することが難しい状況にあります。
患者さんによっては身体に重度の障害を持つ方も少なくありません。
患者さんの病状のレベルは以下の4つにわかれます。
(1)「軽度」(病状安定)
(2)「中度」(病状安定も再発の可能性あり)
(3)「重度」(病状やや不安定)
(4)「最重度」(病状不安定)
高齢化が進んだ影響から、最重度、重度の疾患を患う患者さんが急激に増えています。
当然のことながら、レベルが高くなればなるほど、高度なケアが必要となりますので、
その分時間が削られるので、訪問看護師さんの負担が増えることになります。
■訪問看護師の仕事について
訪問看護師さんの主な仕事についてですが、在宅で療養中の患者さんのバイタルサイン
のチェックをはじめ、医療補助、リハビリ、日常生活の介助を行います。
まず患者さんの健康状態を把握するために検温や脈拍、血圧の測定し、点滴や服用する
薬を確認します。また排便状態も確認したうえで浣腸や摘便を行います。
また日常生活の介助についてですが、患者さんの食事や排せつ、清拭、入浴を介助する
わけですが、日常生活動作に関する支援を、個人個人の計画に沿って介助するのです。
繰り返しになりますが、高齢患者さんが急速に増えています。
老化が進んだことにより日常生活動作の範囲が患者さんによってどうしても異なります
ので、患者さん一人ひとりにあった適切な介助を行わなければなりません。
そうしたことを無視して自分本位で介助すれば後々必ず問題となります。
例えば手の感覚が弱くなり、手の動きがあまり良くない患者さんは、食事のさいに腕を
持ったりしながら支えてあげることで、食事を取りやすくしてあげます。
足腰が弱りすぎて、歩行がうまくできない患者さんもいます。
そうした場合に、トイレまで歩行介助をするケースもあります。
臥床したままの患者さんは、おむつ交換をすることもあります。
患者さんの着替えや体位変換なども、介助が必要な患者さんに対して実施します。
いうまでもなく、訪問看護師にとってコミュニケーションは非常に重要です。
患者さんの看護に関しましては、ケアマネージャー自らがプランニングしたケアプラン
に沿って行うため、訪問看護師さんにとっては窮屈に感じることも少なくありません。
訪問看護師さんは、患者さんを介護する家族の精神的ケアも重要な仕事です。
介護疲れで精神的にかなり追い込まれてしまうケースも多く、何かと相談を受けること
になりますが、信頼関係をつくりあげるうえで、こうしたことも非常に重要です。
■訪問看護の厳しい現実!
病院と併設されている訪問看護ステーションは、病床数に限りがあるため、重度の高齢
患者さんは、ある程度治療が進めば退院して在宅看護にシフトされるケースが多いです。
このため、難易度の高い看護ケアを行わなければならないため、経験の浅い看護師さん
では、対応できない場面に遭遇することも少なくありません。
しかも、少数精鋭で対応しなければならないため、混乱することも多いです。
訪問看護師さんがどんなに頑張ったとしても、一人の患者さんに対して60分として、
次の患者さん宅までの移動もあるので1日6件訪問するのが精一杯です。
医療依存度の高い患者さんが多いと、それすら困難な場合があります。
しかも24時間対応するために緊急呼び出しを当番で行います。
常に携帯電話をそばに置きながら、待機しなければなりません。
患者さんが、あまりの寂しさに耐えかねて真夜中に呼び出されることもあります。
また、最期を看取る場面に遭遇することもあるので、心が休まる暇がありません。
病院は夜勤を終えたら、その日は休めますが訪問看護の場合は、そのまま朝から仕事
となることも少なくありません。そうなると徹夜で働くことになります。
患者さんを看取ったあとに、すぐ他の患者さんが来てくれればいいのですが、そうなら
ないことのほうが多く、その場合は当然「収入減」となってしまいます。
このため、訪問看護ステーションの約4割が赤字経営を余儀なくされています。
経営を安定させるためにも、訪問看護ステーションに所属する訪問看護師さん自ら営業
することもありますので、本当の意味で独立した看護のエキスパートになれます。