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■心筋梗塞と狭心症の違い


心筋梗塞は、狭心症と同じく動脈硬化の症状が進むことによって発症する重度の疾患で、ちなみに「動脈」は、心臓から流れ出る血液が流れている血管のことです。


心臓は血液を送り出すポンプの役割があり、人間が寝ている間も休むことなく動いてるわけですが、血液は体内に一定の量しかないため、全身の血管の中を循環しています。


こうしたことから、心臓と血管は「循環器」といいます。また心臓は言うまでもなく、人間が生きていく上でもっとも重要な臓器の一つとされています。


まず「狭心」は冠動脈が詰まったり、急速に細くなったりして、詰まりかかると、心臓への血液の供給が著しく低下し、心臓の筋肉への血の巡りが悪化した状態をさします。


狭心症は、急な胸の痛みによって、心臓への負担を抑えようと体が自然と対応します。しかしいつまでたっても生活習慣の改善がみられなければ、再発リスクが高まります。


一方、「心筋梗塞」は、冠動脈がよりつまったり、細くなってしまうことによって、心臓の筋肉が死んでしまうことから、心臓の機能低下した状態をさします。


心筋梗塞により、不整脈や心機能が大幅に悪化し、最悪の場合突然死するケースもあるので、急性心筋梗塞を患ってしまった患者さんの処置は非常に難しいです。




■急性心筋梗塞の看護ケア


不穏の状態では安静に保つことが困難なため、回復が遅れたり、症状がさらに悪化する可能性が高いことから、約半数以上が病院に搬送される間に死亡するとされています。


病院到着後は、看護師さんは最低でも2人で手際よく対応しなければなりません。


急性心筋梗塞の場合、基本的に日常生活の全てを看護師さんによる介助で対応します。


特に気を付けたいのが「排便介助」です。便秘になりやすいので、力むと心臓に余計な負担をかけてしまうため、「排便コントロール」が非常に難しいです。


また発症した当日は禁食とし、CPKが低下し、バイタルが安定したら食事を開始します。


集中治療による患者さんの不安や恐怖は当人しか分からない辛いものです。


こうした理由から、看護師さんによる精神的ケアが非常に重要になります。


また、親族を中心に面会する人達の存在が非常に重要ですが、だれでもいいというわけにはいきません。仕事の不安を与えないためにも、仕事関係者の面会は要注意です。





■急性心筋梗塞の合併症リスク


急性心筋梗塞による合併症は命の危険性がありますので、対応が非常に難しいですが、かなりの時間が経過することで慢性的な合併症となるケースもあります。


合併症の症状として多いのが以下の5つです。


(1)左室破裂

(2)心室中隔穿孔

(3)僧帽弁閉鎖不全

(4)左心室瘤

(5)虚血性心筋症


合併症を起こしてしまえば、冠動脈の治療と合併症の治療を同時に行います。


合併症がなければ、その後の経過は良好となり、心臓のリハビリを開始できます。


無事退院出来ても慢性化してしまい、入退院を繰り返すケースも少なくありません。


心筋梗塞の再発を予防するためにも、できるだけストレスを抑える必要がありますが、テレビや雑誌などで自分に都合よく仕入れた知識は適さない場合も多いです。


正しい方法と正しい知識を知ってもらうためにも、適切な指導を行っていきます。





■再発リスクを抑えるケア


そして、再発リスクを抑えるためにも、生活を共にしているご家族の協力が必要です。ご家族にも心筋梗塞を発症する可能性があるわけですから、なおさら重要です。


心筋梗塞を再発させないためにも、発症するリスクについて、しっかり説明しなければなりません。そうすることで、心と体の健康のありがたさを深く理解してくれます。


ようやく職場復帰しても、いきなりフルタイムで働くのはキツイ場合が多いです。


通勤途中の電車の中で再発したなんてことにならないためにも、患者さんには上司の方に相談してもらうように促さなくてはなりません。しかし色々と問題が多いです。


心筋梗塞のような重度の疾患を患った人達が社会復帰するのは容易ではありません。労働負荷量が分かりにくいので、セルフケアが保てないケースも見受けられます。


職場環境についてきちんと把握し、事前にレポートにまとめることを提案されることをオススメします。そうすることによって、理解がより深まることになります。


人間関係の問題によって、強いストレスを感じている方々が沢山います。特に勤務先が急性心筋梗塞のような死に至る危険性のある疾患に理解が低い場合はなおさらです。


こうした人間関係に関する問題はどこにでもありますが、そういった環境に身をおきながら、どのようにして自分の身をストレスから守るか、指導する必要があります。


看護師さんが患者さんの職場までついていくことは出来ないわけですから、患者さんが自ら積極的に心身の健康管理に努めてもらうことが、再発を防止する上で重要です。





■心筋梗塞の治療について


急性心筋梗塞の症状は、突然胸部に激痛が走ります。それまで健康だった人が突然発症するので、自分だけでなく周囲の人たちもパニックになるケースが少なくありません。


突然起こる胸骨下の絞扼感や圧迫感、胸部の重圧や灼熱などの不快感があります。


急性心筋梗塞の症状は安静にしていても、30分以上激痛が続くことが多いです。


また、あまりに突然のことなので、パニックになってしまい、呼吸困難や意識消失発作、嘔吐、目眩などがある場合も多く、多方面から死の恐怖に襲われます。


心電図によって心筋梗塞か、そうでないか診断することができますが、心筋梗塞は動脈硬化が進んだことにより、起こるため、心臓カテーテルで冠動脈の病変を把握できます。


心筋梗塞の治療法に関してまして以下の3つが主流となっています。


(1)冠動脈血栓溶解療法(PTCR)

(2)経皮的冠動脈形成術(PTCA)

(3)緊急冠動脈バイパス術(CABG)


看護師さんの適切な処置によって、患者さんの命を救うことが多々あります。


病院で他の病気の治療のために入院していた患者さんが、突然狭心症や心筋梗塞に襲われるケースは少なくありません。意外と多いのがトイレでの排泄の最中です。


便秘に苦しんでいる方は、便が固いので排泄するさいに常に力まなければなりません。この力む行為が、思いのほか心臓に負担がかかり、突然胸の痛みを訴えます。


ベテランの看護師さんであれば、患者さんの訴えと患者さんがおかれている状況を見て瞬時に狭心症や心筋梗塞を疑い、すぐに心電図を取ることもできます。


しかし、経験の浅い看護師さんの場合は患者さんを落ち着かせて、医師に連絡を取り、先生からの指示を仰ぐため、心筋梗塞と診断できるまでに、かなり時間がかかります。


急性心筋梗塞の場合は、一刻を争うケースが多いので、対応一つで大きな差がでます。手術が遅れれば遅れるほど患者さんの命が危険にさらされることになります。


看護師さんの果たす役割がいかに大きいかお分かりいただけるかと思います。


心筋梗塞を患う患者さんの多くが中高年です。生活習慣を改善することによって、再発リスクを抑えるためにも、看護師さん自ら指導する立場にならなければいけません。


そういったことまで勉強しなければならないので、本当に大変ですよね。





■精神的ケアの重要性について


急性心筋梗塞によって死の恐怖を体験した患者さんの精神的ケアは非常に重要です。


今まで感じたことのない痛みと恐怖に襲われたことで、パニックに陥ります。


記憶は簡単には消せませんから、恐怖感に苦しめられるケースが少なくありません。


このため心筋梗塞患者さんを治療するにあたって、こうした精神的な苦しみを緩和するためのケアが非常に重要になります。そうすることで治療の効果も高まります。


心筋梗塞によって突然芽生えてしまった恐怖心や不安な想いは簡単には消せないので、とにかく生活習慣を改善して、心身の健康を取り戻すしかありません。


月並みですが生活習慣を改善するには、適度な運動とバランスの取れた食事、質の高い睡眠を習慣化することが大切ですが、これが簡単そうで中々できません。


特に中高年の患者さんは、仕事でそれなりの立場にある方が少なくないことから、人によっては看護師さんの「健康指導」を全く受入れてくれない方もいます。


しかし、無理に押しつけようとするのは逆効果です。患者さんに一日も早く健康を取り戻してもらいたいという思いを言葉にすると、意外と聞き入れてくれます。


そして、定期的に健康診断を受けてもらえば、自分の体が今現在どのような状態にあるのか分かるので、改善される方向に動いていれば、徐々に死へ恐怖が収まります。


こうしたことから、循環器科で働く看護師さんは常に勉強することが求められます。