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■化学療法科とは?


化学療法は、英語でchemotherapyといい、抗がん剤治療など薬物療法のことをさします。抗がん剤を投与することによって、全身のがん細胞を死滅させることができます。


元々は感染症の治療のことを化学療法と呼んでいたのですが、化学が進化したことにより、薬物療法の重要性が高まったため、化学療法でカバーできる範囲が拡大しました。


今では、「抗生物質」のような化学物質ではないものを患者さんに投与する治療方法まで化学療法と称されています。今後さらに重要性が高まることが予想されます。


基本的に「化学療法科」ではがん治療を中心に行っています。


最近は医療が進化したことによって、がん治療も選択の幅が広がっています。


がん治療を大きく分けると以下の三つになります。


(1)手術

(2)放射線治療、

(3)抗がん剤治療



放射線治療は悪性腫瘍がある身体のある部分に放射するわけですが、患者さんの肉体へのダメージが小さいうえに1回の治療が非常に短時間で完了することが可能です。


しかし、放射線治療は医師の放射線治療に関する技術に大きな差があります。


同じ効果が得られるわけではないので、どの医師に治療してもらうかが重要になります。


しかし、抗がん剤治療のような化学療法の場合は局部だけでなく、身体全体をカバーすることができるので、ガンが他の臓器に転移した場合でも対応することができます。




■化学療法科の看護師の仕事と役割とは?


副作用も以前ほどは大きくありませんが、それでも何らかしらの副作用がありますので、化学療法科で働く看護師さんは、患者さんの訴えに真摯に耳を傾けなければなりません。


そして、痛みを抑えるためのケアを施すだけでなく、精神的ケアも非常に重要な仕事です。入院患者さんだけでなく、通院されている方にとっても同様に精神的ケアが大事です


なぜなら大抵の患者さんは、医師からガンを宣告されると、絶望の淵にたたされることとなり、これまで感じたことのない「死への不安」に襲われることになります。


生まれてはじめて死を意識することとなるので、不安に悩まされるのは仕方ありません。しかし、そのままの状態が続けば、がんの進行を加速させてしまうかもしれません。


そうならないためにも、多方面から患者さんのケアを行いQOLの維持に努めていきます。


ですので、化学療法科で働く看護師さんの仕事は本当に大変です。


幅広いがん治療、がん看護に関する知識やスキルが求められることになるからです。


ですので、がんについてただ知っているというだけでは当然トラブルの元になります。





■チーム医療の一員として働く難しさとは?


化学療法科でもチーム医療で対応する病院が多く、高い治療効果を実現しています。


医師や看護師、薬剤師、臨床心理士、検査技師などのメディカルスタッフがチームとなり、それぞれ専門分野の立場から意見交換をし、患者さんにとって最善の治療を進められます。


こういった点がチーム医療の大きなメリットですが、それゆえに働く側は大変です。


それぞれ異なる専門分野の人たちで構成されている組織の一員として働くことになるため、看護師としての責任はより重くなりますので、その点を意識して働く必要があります。


化学療法科で働く看護師さんはガン患者さんの看護を中心に行うわけですが、今現在がん治療は「抗癌剤治療」以外に「放射線治療」、「手術」の3つが基本となっています。


それぞれ患者さんのガンのステージ分類に応じて適切な治療を行います。


全ての患者さんのがんの状態が同じレベルにあれば問題ありませんが、そういうわけにはいきませんので、各ステージに応じた治療に関する知識がどうしても必要になります。


そうしないと「がん看護」以前に患者さんに説明を求められても適切な回答ができません。患者さんが不信感を持てば、それ以上「がん治療」に向き合ってはくれないでしょう。


もっといけないことは、不確かな回答をすることです。後々大問題に発展しかねないので、医師やその他の専門のメディカルスタッフに問い合わせて確認しなければなりません。


しかし、質問するにしても、ある程度のことが分かっていなければ、質問になりません。


例え医師の先生がきちんと患者さんの質問に対する答えを教えてくれたとしても、それを理解していなければ、ただ単に患者さんに伝えただけになってしまいます。


ガンは命に関わる疾患であるため、他の職場にはない絶対許されないミスがあります。


最悪の場合、何度も何度も確認することとなり、多方面で迷惑をかけることになります。


がん治療を受けている患者さんとそれを支えるご家族の方に不信感を持たれるだけでなく、他の病院へ転院されたり、訴訟問題となれば病院の信用問題にかかわります


ですので、知識は勿論大事ですが、コミュニケーションスキルも非常に重要になります。このため化学療法科で働く看護師さんは、忙しい合間をぬって勉強してます。







■化学療法科で働く看護師さんの志望動機とは?


術前・術後の看護をしっかり行いながら、少しでも患者さんの苦しみが緩和されるようにサポートしなければなりません。特に術後は精神的に辛い状況にあるのでなおさらです。


長時間におよぶ手術によって生じる痛みに耐えようとする気力がわきません。こういった強い痛みが生じた場合は痛みを抑えるために内服薬などを用いります。


また気になるお給料についてですが、化学療法科は上述したとおり非常に厳しい労働環境にあるため、お給料も他の科で働く看護師さんよりも若干高めに設定されてます。


そして、化学療法科で看護師として働いた経験は他の科に移る場合も高く評価されるので、キャリアアップを目指すのであれば、化学療法科は大変ですがピッタリの職場です。


ちなみに化学療法科で働くことを希望されている看護師さんは少なくありません。


(1)ご家族や親戚の方をガンで亡くされた

(2)キャリアアップ、スキルアップのため

(3)がん治療の発展に少しでも貢献したい



数ある診療科の中でも化学療法科はさらに大変な部類に入ります。しかし、上述した理由などから化学療法科で看護師として働きたいと考えている方がいます。


何の仕事でもそうなんですが、志望動機により、その人の働き方が決まるといっても過言ではありません。化学療法科は人としての誇りのために働く人が多い職場です。





■化学療法科の仕事は非常にやりがいがあります


これほどまでに社会貢献できる仕事はそうそうありません。


特に癌末期の患者さんのケアは、精神的支えとなるためのサポートが必要になります。


人として生きるためには「尊厳」を保たねばなりません。もし尊厳が無くなってしまうと人ではなくなってしまうので、看護師さんの精神的ケアが非常に重要になります。


また最近では、人生最期の日を自宅で迎えたいと希望する患者さんが増えていますので、緩和ケア・ホスピスに関する知識は、こうした場面でどうしても必要となります。


そして、在宅医療にスムースに移行するためのサポートも大事な仕事です。


化学療法科で働く看護師さんが抱える仕事量の多さは尋常ではないので非常に大変です。しかし、それ以上にやりがいのある仕事なので、ご検討頂ければ幸いです。