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今回ご紹介させていただく動画は、
アスペルガー症候群の概念や基本的な治療
や支援について解説しています。


今回解説しているのは本田秀夫先生です。


現在信州大学医学部附属病院
「子どものこころ診療部」の部長です。


地デジになる前のものなので、
かなりお若いですが、アスペルガー症候群
について分かりやすく解説しています。



今回の動画も13分以上ありますので、
非常に長いですが、お時間のあるときに
ご覧いただければ幸いです。
 
 
 

 
 
 
■アスペルガー症候群とは?


「本田秀夫先生」

「アスペルガー症候群」は、今日の精神科
臨床における最も重要なトピックの一つ
と言って良いでしょう。


ここではアスペルガー症候群の
概念について解説するとともに


アスペルガー症候群の人たちに
見られる様々な社会生活上の問題点
について整理します。


そしてアスペルガー症候群の人たちの
社会参加を促進するための治療と支援
のあり方について考えたいと思います。


アスペルガー症候群は
「自閉症スペクトラム障害」
という発達障害のグループの中で自閉症
と並んで主要な位置を占めています。


自閉症スペクトラム障害は社会的相互交渉
の質的異常、コミュニケーションの
質的異常及び著しい興味の限局と
反復的行動パターンを特徴と
する一連の障害なんです。



これらの三領域における特徴的な症状が
「乳幼児期」から出現し


生涯にわたって様々な社会に
適応上の困難を示すことが特徴です。


自閉症とアスペルガー症候群は
その中心をなします。


自閉症は言語発達の遅れや異常が顕著な
最も典型的な自分で重度の知的障害
を伴う場合から正常知能のまで
幅広く分布します。


これに対して、アスペルガー症候群は
流暢な言語表出とみられるタイプで、
知能は正常域にあることが
多いのが特徴です。




■アスペルガー症候群の実例(1)


アスペルガー症候群の人たちが
示した社会的相互交渉の異常および
コミュニケーションの異常の実例を
いくつかご紹介します。


この例は幼児期のエピソードです。


砂場で遊んでいたところに、友達が
「一人なの?」と声をかけたのですが


この子が何も答えないため、相手の子は
他の場所へ行ってしまいました。


すると何分か経ってから
この子は突然相手のところにやってきて、
「うちは四人家族だよ」と答えたのです。


このように、通常ならば直感的に理
解できる話の文脈はピンとこないために
コミュニケーションがずれてしまいます。




■アスペルガー症候群の実例(2)


次は小学生のエピソードです。


母親が怪我をしてしまい、
病院で手当てを受けて夕方
帰ってきたところ


心配そうに出迎えたこの子供は
「ご飯はまだ?」と母親に
 言ったそうです。通


常ならば母親の怪我の具合を
心配するこの状況で


この子の場合はいつもよりも
ご飯の時間が遅れることが
心配でしょうがなかったのです。




■アスペルガー症候群の実例(3)


その他には会社の宴会で
「今日は無礼講」といわれたため


上司を呼び捨てにしたら酷く怒られた
という成人のエピソードもあります。




■アスペルガー症候群の行動パターン


著しい興味の限局と
反法的行動パターンについては...


●特定の者に強い興味を持つ

●特定の手順を繰り返すことにこだわる

●常同的な動作を繰り返す


など自閉症と共通するものも見られますが


アスペルガー症候群では、
知的水準の高さを反映した
パターンも見られます。



例えば、興味を持った領域に関して
「膨大な知識」を持つように
なることがあります。
 
 
社会参加への関心が出てくると、
社会的構造に埋め込まれる形のこだわり
となることがあります。
 
 
例えば...

●ルールや決まり事をかたくなに守る。

●他者にルールの順守を強要する。

●勝敗がつくゲームで一番になる
 ことにこだわりすぎてみんなが
 ゲームを楽しめない

などの問題がしばしば見られます。




■二次障害を呈するケース


アスペルガー症候群では
症状の軽さと社会適応の良さとは
必ずしも比例しないので注意が必要です。


●冗談や皮肉を真に受けてしまう。

●発言が一方的である。

●融通が利かない


などの特徴の為に対人関係を深め
維持することが難しいからです。


一見普通に見えるだけに、
これらの特徴が周囲の反感をかい、
仲間はずれやいじめの対象となって
しまうことがあります。


思春期前後にいじめに遭ったりして
不登校や引きこもりになるケースや、
うつ状態や不安状態など


他の精神症状を併発してしまう、
いわゆる二次障害を呈するケースは
その後の支援が極めて困難になる
ことが指摘されています。




■急速に増加している背景について


近年、「自閉症スペクトラム障害」と
診断される人が爆発的に増加して
いると言われます。


かつて自閉症は人口の0.04ないし
0.05%と考えられていましたが


最近では、自閉症で0.3%、
自閉症スペクトラム障害全体で1%以上
との報告が次々と出されています。



これは横浜市港北区で生まれた子供の中の
自閉症スペクトラム障害の発生率を出生年
ごとの推移で示したグラフです。


これを見ますと、1993年をさかいに、
発生率が増えているように見えます。


知的障害を伴う群と伴わない群に分けて
みると、知的障害を伴う群の発生率は
増えていないのに対して


知的障害を伴わない群では優位に
増加しておりました。


これは自閉症に対する知識が徐々に浸透
していることによる検証例の受診数増加
を反映している可能性があります。


多くの慢性疾患が典型例よりも
非典型例、重症例よりも軽症例の方が
はるかに多いように


自閉症スペクトラム障害においても、
典型的な自閉症や知的障害を伴う
例よりも症状としては


非典型で知的障害も伴わない例の方が
多いというのはむしろ自然で
あるように思われます。


自閉症スペクトラム障害の診断例の増加は
その多くがアスペルガー症候群です。


今やアスペルガー症候群こそが
今日的な意味での発達障害対策の
中核群であるといえます。




■アスペルガー症候群の治療や支援について


次に治療及び支援について考えます。


治療や支援を考える際には
目標を設定が必要となります。


そのためには早期解明が適切に行われ、
成人した事例に学ぶと良いでしょう。


一歳半検診で早期発見され、
二歳後半に専門機関を受診し
早期介入を受け...


その後も定期的に外来で
フォローアップされている
二十代半ばの男性の例を
見てみましょう。


この方は高校卒業と同時にメーカーに
正社員として就職しています。


上司に対しても臆せず問題が指摘や
提言を行うところがあります。


これはアスペルガー症候群の特徴では
あるのですが、この会社ではこれを
積極性があると評価されています。


コンピューター端末の操作法のマニュアル
を作り社内で好評を博しております。


シフト制のため職場の人たちと職場外では
あまり付き合わなくても良い環境です。


趣味は鉄道に関する
雑誌の収集と鉄道旅行です。




■アスペルガー症候群の人が社会に適応する条件


このような「適応の良好」な例と
共通する特徴を挙げてみます。


まず適応良好とは言え、
アスペルガー症候群の特徴は
しっかり残っています。


ところがアスペルガー症候群の特徴も
含めて自分の個性を周囲から肯定的に
評価されている場合が多いようです。


また、苦手の事をあまり直視しなくても
良い環境にいることが多いです。


社会的に逸脱せず、趣味を持って
充実した余暇を過ごせています。


アスペルガー症候群に特徴的な症状は
完全に消失させることが困難です。


そこで治療や支援については
リハビリテーションの考え方が
参考になります。


すなわち...

固有の特徴が残存したままでも
ある程度の社会生活が保証できる
ような「環境調整」と


教育的手法を用いた本人への治療という
二つの側面ををバランスよく配しながら
支援を進めていく必要があります。




■必要なトレーニングとは?


環境調整は二次障害の予防の観点から
見て極めて重要となります。


その第一歩は家族や教師など
周囲の人たちがアスペルガー症候群
の特徴をよく理解することです。


アスペルガー症候群のような
非定型発達の人たちは、
定型発達の人たちよりも
劣るのではなく...


少数派であることによる
ハンディキャップがあると
考えることができます。



非定型発達の人でも
適応しやすくなるよう、
環境側の調整を試みる
ことも重要です。


例えば、暗黙の了解や
あ・うんの呼吸を配した
コミュニケーションを
とることを心がける。


予定を明示する。


本人が興味を持ちやすい題材を選択する
などの工夫が考えられます。


学校や保育所や幼稚園などの
インクルージョンの場でこのような
配慮がなされることが求められます。


教育的手法を用いた治療では、
認知行動療法やソーシャルスキル
トレーニング、ペアレントトレーニング
などの技法を用いた試みがなされています。


場としては医療機関専門領域の機関、
専門療育の機関、特別支援教育(通級
指導教室など)などの特別支援教育
の場などで行われます。


教育的手法を用いた治療で
カギとなるのは「自立スキル」と
「ソーシャルスキル」です。




■各種スキルを身につけるには?


自立スキルを身につけるための
基盤には自分の特徴をありのままで
受け入れられる「自己肯定感」が
形成されている必要があります。


適切な自己肯定感を形成させるためには
日頃から得意なことや人と違う事を、
良い個性として「褒める習慣」を
持っておくことが重要です。


ソーシャルスキルを身につけるための
基盤は社会集団の中で他者と対人関係
を持つことに対する意欲を育て
なければなりません。


そのためには要求、拒否、報告、連絡、
相談などの基本的な対人行動をとり


それがうまくいったという成功体験を
日頃から積み重ねていくことは重要です。


こうした治療や支援は一つの場所だけで
行うのではなく、生活の場全てにおいて
一貫して行われることが重要です。


そのためには地域の中で本人と家族を
支えるためのネットワークを作って
おく必要があります。


現在、すべての都道府県に
発達障害者支援センターが設置されており


アスペルガー症候群の人たちを地域で
支援するための地域資源に関する
情報を持っています。


アスペルガー症候群の人を
診療する機会があった場合には、
各地域の「発達障害者支援センター」
に問い合わせてみてください。



●発達障害者支援センター

http://goo.gl/OimDdl




今回の動画はここまでとなっています。


アスペルガー症候群をはじめ、
様々な障害を抱えている方は是非とも、
一度上述したサイトを確認してください。


各地方にある発達障害支援センターを一覧
できるようになっています。


最寄りにある発達障害支援センターにて
お問い合わせいただければ幸いです。



いつも本当にありがとうございます。

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