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今回ご紹介させていただく動画は、
帝京大学医学部附属病院の伊藤医師による
手術で治す難易度の高い耳の病気について
大変わかりやすく解説しています。


耳鼻科では手術でしか治すことができない
病気や、逆に手術でも治すことができない
難易度が高い病気が幾つかあります。


しかも、熟練した技を必要とするので、
耳鼻科の医師ほど技術格差が大きいです。


ですので、噂が噂を呼んで、
いわゆるスペシャリストのもとに
全国から受診が殺到します。


帝京病院は、単に臨床研究が進んでいる
だけでなく、毎年数多くの患者さんを
診ているので、これまでの実績が
高く評価されています。


今回の動画では、実際に行われている
手術について分かりやすく解説しています。



今回の動画も15分以上ありますので、
非常に長いですが、お時間のあるときに
ご覧いただければ幸いです。
 
 
 





■耳の病気の特徴とは?


「佐々木梓さん」

日々音に囲まれて生活している私たち、
耳は聴覚を担い、生きていく上で
大切な役割を果たしています。



「ナレーション」

耳の役割は聴覚だけではありません。


耳の一部である三半器官などは
体のバランスを司る器官でもあり


耳の病気になると、生活に大きな支障
を来してしまうこともあります。



「伊藤健医師」

耳の病気と申しましても色々ありまして、
薬で治るもの、それから補聴器で
対応できるものもありますが、


中には手術をしなければ完治しないもの、
又しなければ命かかるものもあります。


帝京大学病院は我国の中でも
有数の手術実績を有しております。



「佐々木梓さん」

今回は様々な耳の病気の中でも
手術によって治療する耳の病気
についてお伝えします。



「ナレーション」

帝京大学医学部耳鼻咽喉科の
伊藤健司医師の難聴やめまいなどに
苦しむ患者が数多く訪れる帝京大学病院で
高い技術が求められる耳の手術を数多く
こなすスペシャリストです。




■耳の病気で手術が必要な物


「佐々木梓さん」

耳の病気の中で手術が必要なものは
どのようなものがありますか?。



「伊藤健医師」

一番多いのは慢性中耳炎や耳硬化症のよう
に耳の中での中耳という部分に生じる
病気ですけれども、


それ以外にも重度の感音難聴、内耳が機能
しない人に対して、人工内耳という器械を
埋め込む手術があります。




「ナレーション」

耳は大きく分けると、体の外側から外耳、
中耳、内耳の3つの部分から構成されて
いますが、私たちが普段耳と言っている
耳介、そして耳の穴である外耳道を
まとめて外耳と呼びます。


鼓膜の裏側の空間を、中耳と呼び、
耳小骨を含みますが、細かくは
厚さ0.1mmの薄い膜。


耳小骨はツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の
小さな骨で互いに連なっています。


中耳は時間によって
鼻の奥へとつながっています。


耳管は鼓膜より内側の気圧のバランス
を保つ役割をしています。



内耳は前庭、三半規管、蝸牛から
構成されていて、前庭と三半規管は
平衡感覚を司る器官、蝸牛は音を
感知する機関です。



そして外耳から中耳にかけての障害が原因
の難聴を伝言難聴、内耳や神経の障害が
原因の難聴を感音難聴と呼びます。



「佐々木梓さん」

伝音難聴と感音難聴、それは人がほとんど
認識する仕組みを理解することで
その違いがわかります。


そこでこのコーナー。




■耳が聞こえるメカニズム


ちょっと気になる体の不思議に
私たちがお答えします。



「ナース」

今回は音はなぜ聞こえるの?って
ことですね、ドクター?



「ドクター」

そもそも音ってなんだか分るかな?



「ナース」

空気の波みたいなものですか?。



「ドクター」

そのとおり。音とは空気の振動だ。


耳介で音を集めて外耳道から鼓膜に達した
音は、耳小骨に伝わる。


空気の振動であった音がここで
個体の振動に置き換わるんだ。


そしてさらにアブミ骨は内耳の前庭階の
外リンパ液という液体を振動させる。


ここで個体の振動が液体の振動に
置き換わるんだよ。



「ナース」

空気の振動が個体の振動に変わって、
更に液体の振動に変わるんですね



「ドクター」

ここまでの音を伝える部分での障害による
難聴が伝音難聴というわけだ。



「ナース」

なるほど。



「ドクター」

さらにそれが蝸牛の中で電気的な
信号に変換され、聞こえの神経、
聴神経に伝えられるんだ。


そしてそれが脳に到達して
音として認識されるんだよ。



「ナース」

その音を感じる部分での難聴が
感音難聴ってことですね。


なにげなく聞いてる音もすごく複雑な
仕組みで伝わっているんですね。




■耳の手術とは?


「佐々木梓さん」

こちらでは数多くの耳の手術を
行っているそうですね。



「伊藤健医師」

慢性中耳炎や耳硬化症の手術など中耳の
手術を年間300例近く行っていまして、
国内の医療機関の中でも有数の
手術症例数を誇ります。


また、手術では聴力が改善しない
感音難聴の患者さんに対しても、
補聴器外来を行っておりまして、
年間2000人の方が
受診されています。



「佐々木梓さん」

今回ご紹介頂く手術は
どのようなものでしょうか?



「伊藤健医師」

耳の病気の中でもやっかいなものである
「真珠腫性中耳炎」の手術、


それから極めて小さな病変である耳硬化症
に対するアブミ骨の手術。


さらには高度の感音難聴に対して治療が
可能になった人工内耳埋め込みの手術。


この3つをご紹介したいと思います。




■真珠腫性中耳炎とは?


「伊藤健医師」

真珠腫性中耳炎とアブミ骨手術は
中耳の手術です。


真珠腫性中耳炎とは、
鼓膜や外耳道の皮膚が中耳腔に
進出して、袋状に膨らむ病気です。


この袋の表面が白くてキレイで
真珠のように見えることから、
真珠腫とよばれております。


しかしですね、その外見と異なりまして、
真珠腫とは周りの骨を溶かして、


どんどん広がってしまうと、
とてもこわい病気であります。




「ナレーション」

真珠腫性中耳炎は、真珠腫が出来る場所や
拡大の仕方によって症状が変わってきます。


平衡感覚をつかさどる三半規管に拡大して
いくと、めまいを起こすようになります。


また中耳の裏側に通っている
顔面神経の方に拡大していくと、
顔面神経麻痺が起こってきます。


さらに脳との境の骨を
破壊してしまうと炎症が波及して、
髄膜炎に陥ってしまい、最悪の場合、
命に関わってくることもあります。




■真珠腫性中耳炎の症状とは?


「佐々木梓さん」

真珠腫性中耳炎が疑われるのは、
どのような症状がありますか?。



「伊藤健医師」

初期のうちはほとんど症状は出てき
ませんが、その場合でも耳鼻科を
受診すれば発見することは可能です。


ある程度進行しますと、強いニオイを
もった耳垂れが出てきます。


さらに内耳の骨を壊す程度まで
進行してしまうと、めまい、耳鳴り、
難聴という酷い症状が出てきます。




■耳硬化症とは?


「佐々木梓さん」

アブミ骨手術をする耳硬化症とは
どんな病気なんでしょうか?



「伊藤健医師」

耳小骨の中でもアブミ骨という骨が
動きにくくなっておこる病気です。


硬化病変というのがアブミ骨の周囲に
増殖して、アブミ骨を動かなくして
しまうことによって起こります。


初期症状として難聴を自覚してから
徐々に悪化をしていきます。


中には耳鳴りを伴ってくる
場合もあります。


ただ進行がゆっくりなので、
老人性難聴と誤解して補聴器に頼って
しまう方もいらっしゃいます。




■真珠腫性中耳炎の検査とは?


「伊藤健医師」

まず耳の中を観察します。


真珠腫性中耳炎の場合には顕微鏡で耳の中
を覗けば真珠腫を見ることが出来ます。


次に聴力検査を行います。


これは様々な音の高さについて聞こえる
最も小さな音を調べる検査です。



「ナレーション」

聴力検査によって、
難聴の症状があるのか?、


その程度はどのくらいなのか?、
伝音難聴なのか?、感音難聴なのか?
などが分かります。


さらにCTスキャンで断層写真を撮ります。


これで病変の進展範囲、
骨がどの程度壊れてしまっているか、
知ることが出来ます。


これは真珠腫性中耳炎の患者の
CTスキャンの画像。


真珠腫がない方の画像と比べると
進行した真珠腫の病変が内耳の三半規管
のところにある骨を溶かして、穴が空いて
いるのが分かります。


さらに別の真珠腫性中耳炎の患者の画像
では、拡大した真珠腫が脳の下にある骨を
溶かし、なくなっている様子が分かります。


一方、こちらはアブミ骨手術が必要な
耳硬化症の患者のCTスキャンの画像。


正常の場合、白く映るアブミ骨が
つながっている部分の骨が硬化病変に
よって灰色になっているのが確認できます。


硬化病変は、骨よりも柔らかいため、
灰色に映るのです。




■真珠腫性中耳炎の手術とは?


「佐々木梓さん」

真珠腫性中耳炎は、
どのよに手術をするのでしょうか?。



「伊藤健医師」

まず真珠腫を完全に摘出する
必要があります。


真珠腫性中耳炎は、骨を壊して、
内耳、顔面神経、脳にまで到達して
いることもありますので...


これらを壊さないように慎重に
保護しながら病変を除去する
必要があります。


次に壊れてしまった鼓膜、外耳道を再建、
さらに耳小骨も切れてしまってますから、


これを再接続させて聴力をよくするような、
そういう細工をいたします。




■アブミ骨手術とは?


「佐々木梓さん」

では、アブミ骨手術はどのよう
にやるのでしょうか?。



「伊藤健医師」

動かなくなったアブミ骨を人工のピストン
と取り替えるのがアブミ骨手術です。



「ナレーション」

取り替えるアブミ骨は、人体の骨の中でも
最も小さいと言われている骨です。


これを長さ4〜5ミリメートル、
直径0.6〜0.8ミリメートル程度
の人工ピストンと置き換えます。


人工ピストンのカギ状の部分をキヌタ骨
に接続して内耳に取り付けます。



「伊藤健医師」

アブミ骨手術は、真珠腫とはまた違った
細かいテクニックが必要となります。


アブミ骨の底の板の幅は、1ミリメートル
ちょっとしかありませんから、コンマ
1ミリレベルでの細かい操作が
必要とされてきます。




■人工内耳手術骨手術とは?


「伊藤健医師」

長期の使用できない高度難聴の
患者さんに対する人工内耳手術も
積極的に行っています。



「佐々木梓さん」

人工内耳とはどのようなものなのですか?



「伊藤健医師」

人工内耳とは音の代わりに電気を使って
聞こえる神経を刺激します。


これによって脳で音や言葉の感覚を
得ることができます。



「ナレーション」

人工内耳は超小型のコンピューターを
内蔵する本体と内耳に挿入する
細い電極からなります。


本体を耳の後ろの部分に埋め込み、
電極を内耳の蝸牛に挿入します。



「佐々木梓さん」

では手術でどのように
取り付けるのでしょうか?



「伊藤健医師」

この人工内耳の手術には2つの
ポイントがあります。


一つは電極が中耳を通過する溝を
正確に削る技術です。


外耳道と顔面神経と約3ミリ程度の
隙間にキレイに穴を開けて顔面神経を
傷つけないとこういう技術が一つです。


もう一つは内耳に正確に電極を
挿入する技術です。


感音難聴になってから長期間たった
方は内耳に骨ができたりして、
挿入が難しい方もいます。


こういった場合でも正確に電極を
挿入する場合には熟練が必要であります。



「ナレーション」

こちらは実際に人工内耳を取り付けた方
のレントゲン写真、右耳の部分にいれた
人工内耳の本体から電極が伸びていて、
中耳を通過して内耳に挿入されています。



「佐々木梓さん」

小さな子供にも人工内耳手術を行なう
ことがあるということですが?



「伊藤健医師」

大人になってから両方の耳が
聞こえなくなった方と違って、
生まれたときから聞こえない赤ちゃんは
大変な問題を抱えています。


つまり言葉によるコミュニケーションが
できるようにならない可能性が
あるということです。


普通に聞こえている子どもは、放っといて
も言葉を学ぶようになりますけども、
聞こえない子どもは違います。


早期に発見して、補聴器を使って、
訓練をしなければなりません。


そして、補聴器が不十分であるとなった
場合は人工内耳を埋め込む必要が
でてくるわけです。


小児の言語訓練は容易ではないので、
熟練した言語聴覚士があたる
必要があります。


帝京大学病院は伝統的にこの分野に
大変強く、質量共に十分必要な
スタッフを用意しています。



「佐々木梓さん」

では最後に耳の病気はどんなことに
気をつければいいですか?。



「伊藤健医師」

耳の病気には治療が遅れてしまうと、
完治しなかったり、聴力を失って
しまったりするものがあります。


ですから、耳だれが出る、耳鳴りがする、
聞こえが悪い、目眩がするなどのとき
には病院を受診してください。



「佐々木梓さん」

今回は「手術で治す耳の病気」
についてお伝えしました。


真珠腫性中耳炎のように
やっかいな病気もありますので、


耳の聞こえが急に悪くなった、
目眩がするといった症状があるときには
すぐに病院に行くようにしたいものです。