今回ご紹介させていただく動画は、
帝京大学医学部附属病院の今水流による
最新のステントグラフト手術について
大変わかりやすく解説しています。
ステントグラフト手術は、
大動脈瘤手術、弁手術などの
難易度が高い病気の手術に
用いられています。
ステントグラフト手術により、患者さんの
肉体への負担は大幅に軽減されました。
このため、患者さん自らステントグラフト
手術を求める動きが広がっています。
しかし、新しい手術ということもあって、
医師によって技術差が大きいなど、
小さな問題点はいくつかあります。
帝京病院は、毎年数多くの患者さんを
診ているので、これまでの実績が
高く評価されています。
今回の動画では、今水流医師による
「大動脈瘤」と「ステントグラフト手術」
について分かりやすく解説しています。
今回の動画も15分以上ありますので、
非常に長いですが、お時間のあるときに
ご覧いただければ幸いです。
■大動脈瘤とは?
「ナレーション」
心臓から全身に血液を送る最大の動脈、
最も太い血管、それが大動脈です。
その大動脈の壁の一部がこぶのように
膨らんでしまう病気が「大動脈瘤」です。
大動脈瘤には
他の病気には無い怖さが
あるといいます。
「今水流智浩医師」
一言でいうなら症状がほとんどない
ということだと思います。
欧米では沈黙の殺人者、サイレントキラー
といわれる事があります。
それだけ症状がなく、進行していくことが
一番の怖さだと思います。
「ナレーション」
さらに大動脈瘤が破裂した場合、
死亡率は極めて高いものになります。
原因はいくつかあるといいます。
「今水流智浩医師」
一番多く考えられるのが
動脈の年齢変化による老化現象が
一番多くあります。
その他に解離性大動脈瘤や感染による
動脈瘤というのもあります。
■ステントグラフト手術とは?
「ナレーション」
大動脈瘤は手術で治療しますが、
近年に患者さんに負担をかけない
手術が注目されています。
それがステントグラフト手術です。
「佐々木梓さん」
ステントグラフト手術は
比較的新しい技術でありながら、
希望する患者さんが増えています。
それは短い入院期間、小さい傷、
そして低浸襲(患者への負担が少なく
回復も早い)という特徴があるためです。
今回の帝京メディカルはステントグラフト
手術についてご紹介します。
大動脈瘤の症状とは?
帝京大学医学部心臓血管外科学講座、
今水流智浩医師。
心臓血管外科のエキスパートとして
多くの患者さんを救ってきました。
初に大動脈瘤についてお聞きしました。
「佐々木梓さん」
大動脈瘤というのは
どのような症状なのでしょうか?。
「今水流智浩医師」
はい、大動脈瘤は一言で言うと
大動脈が拡張する病気です。
原因にはいろいろ考えられます。
主に多く原因となるのが加齢による変化、
要するに年齢、年をとっていくための
変化による血管がもろくなって
拡張するのが主な原因です。
「ナレーション」
大動脈瘤は血管の壁の一部が弱くなる
ことで徐々に拡張、コブが出来た
状態のことです。
このコブを「瘤」といいます。
最も怖いのが大動脈瘤ができても
自覚症状がなく、有効な薬物療法
もないことです。
もし瘤が破れると、激烈な腹痛や腰痛、
内出血による意識障害などを起こし、
死亡率は80%から90%にもなります。
これまでの大動脈瘤は胸部や腹部を
切開して人工血管に振り替える
手術が主に行われていました。
しかし胸部や腹部を大きく切開する
必要があり、患者さんにとって
大変な負担になります。
その負担を軽減するために近年行われて
いるのが、ステントグラフト手術です。
■ステントグラフトの特徴とは?
「今水流智浩医師」
ステントグラフトは、ステントといわれる
金属のバネ状の「骨格部分」をグラフト
といわれる人工血管で覆ったものです。
今日本で使われているステントグラフトは
通常の人工血管で用いられるダクロン素材
の人工血管と、あとはゴアテックスという
素材の人工血管の二種類が主に使われる
というのが現状だと思います。
「ナレーション」
ステントグラフトを動脈瘤の上下の正常な
血管に橋渡しのように置くことで瘤に
直接血圧がかからなくなります。
「今水流智浩医師」
ステンドグラフトの最大の特徴は胸を
開ける手術やお腹を開ける手術と比較し、
傷がものすごく小さくできるということが
最大の特徴だと考えています。
「ナレーション」
手術は足の付け根の二か所を
二センチほど切開します。
「今水流智浩医師」
胸を開けたり、お腹を開けたりしない為に、
入院期間が非常に短くできるというのも、
もう一つの特徴だと考えています。
そのために患者さんの体に対しては、
非常に術後、低浸襲であるという
のも一つの特徴です。
「佐々木梓さん」
症状が現れないうちに進行してるかも
知れない怖い病気「大動脈瘤」。
次にその治療方法を見ていきますが、
その前にこのコーナーです。
■血液と血管の関係
「ドクター」
ここでは、「血液」と「血管」
の関係について紹介します。
「ナース」
血液は酸素や栄養を
体の細胞に届ける役割があり、
その血液の通り道が血管ですよね。
「ドクター」
そのとおり、血管には心臓から
全身に向かう動脈と全身から心臓に
戻っていく静脈があるんだ。
「ナース」
血管って体中を巡ってるんですね。
「ドクター」
その長さを知ってるかい?。
「ナース」
1kmぐらいですか?。
「ドクター」
残念、目に見えない毛細血管も入れると
成人男性でおよそ10万kmもあるんだ。
「ナース」
10万キロ?、すっごく長いですね。
「ドクター」
すべての臓器にくまなく行き渡るように
通っていて、髪の毛や皮膚などにも
栄養と酸素を届けている...
ちなみに皮膚の表面近くに
見える血管は「静脈」なんだ。
「ナース」
とのぐらいの量が流れているんですか?。
「ドクター」
成人男性の方を体重1kg当たり80ml、
70キロぐらいだと5.6リットル
も流れているんだ。
「ナース」
すごい量ですね。
「ドクター」
その血液は心臓がポンプのような役割を
果たして体中に送られるんだ。
「ナース」
とっても大事な機能なんですね。
「ドクター」
また血圧が高く、太っている人は
心臓に大きな負担がかかるんだ。
「ナース」
健康管理も大事ですね。
「ドクター」
血液は生きていくために必要なもの、
だから生活習慣や食生活に気を
つけることが大事。
「ナース」
お肉だけじゃなく、
野菜も沢山食べることが
必要なんですよね。
「ドクター」
そのとおり!皆さんも血液と血管の健康に
十分注意し、定期的に検診を受けましょう。
■実際のステントグラフト手術
「佐々木梓さん」
大動脈瘤を早期に発見し、
ステントグラフト手術を行った
患者さんにお話をお聞きする
ことができました。
「ナレーション」
インタビューの三日前にステントグラフト
手術を受けた北山さん、大動脈瘤の自覚
症状はなく、喉に違和感がある
ため来院しました。
「北山さん」
随分大変な病なんだという
のが分かりまして...
「ナレーション」
北山さんの瘤の大きさは
直径およそ五十八mm、
すぐに治療が始まりました。
「今水流智浩医師」
耳鼻咽喉科の先生と協力して
CT診断した後、手術の予定を立てました。
まず喉頭がんの方の治療、
放射線治療と抗がん剤のほうを
行ったがために、全身状態を見ながら
手術の時期を決定いたしました。
手術の診断をしてから、
検査を行って手術するまで
大体二週間ぐらいを予定したと思います。
「ナレーション」
北山さんは喉頭がんの治療もだったため、
大動脈瘤手術は負担の少ないステント
グラフト手術に決めました。
「北山さん」
正直いいまして、
あまり体に傷つけないように、
なおかつあの早く退院できる方法は、
ということで選択したんですけどね、はい。
「ナレーション」
なお手術する必要がある動脈瘤の大きさは、
胸部で直径55ミリ以上、腹部で直径
45ミリ以上が目安となります。
ステントグラフト手術を選択した北山さん、
手術は全身麻酔の後、足の付け根を
2cm程度切開します。
切開した場所からステントグラフトを
挿入するために必要になってくるのが、
このデリバリーカテーテルです。
実際に使われているデリバリーカテーテル
を見せていただきました。
「今水流智浩医師」
ステントグラフト自体は、
この中に入ってます。
「佐々木梓さん」
えっ〜?
「ナレーション」
そのカテーテルを切開した
足の付け根から差し込みます。
X線透視モニターを見ながら
着実に挿入します。
そして大動脈瘤のある場所に
ステントグラフトを設置します。
わかりやすく見せていただきました。
■ステントグラフトの設置
「今水流智浩医師」
そうするとですねステントグラフト自体は
中にこうやって折りたたんであるんですね。
それでこれが患者さんの適切な位置で....
「佐々木梓さん」
膨らんできましたね。
「今水流智浩医師」
そうですね。
「ナレーション」
カテーテルを抜くと、
ステントグラフトが現れ、
膨らむことで動脈にしっかり
固定されるのです。
手術後は血液の流れが変わるため、
瘤は次第に収縮し、ステントグラフトは
さらに固定されます。
手術を受けた北山さんの大動脈瘤は、
ステントグラフトによって治療されて
いることがわかります。
「北山さん」
終わってほっとしたというのが
一番最初に浮かんできましたね。
「ナレーション」
大動脈瘤の治療に
効果的なステントグラフト手術、
しかし、注意する点もあります。
■ステントグラフト手術は万能ではない
「今水流智浩医師」
ステントグラフト手術は非常に有効な
手段と考えていますが、患者さんの
状態によっては胸を開けたり...
お腹を開けたりする手術の方が患者さん
にとっていい場合もあります。
患者さんの状態を的確に判断して、
どちらかの手術を選ぶかというのを
吟味した上で治療を選択していく
ことが大事だと思います。
「ナレーション」
手術から三日後、北山さんは歩くことが
出来るほど回復していました。
「北山さん」
次の日から歩いていますんで、はい。
「佐々木梓さん」
なるほどお食事も?
「北山さん」
ええ、普通に食べてます。
「ナレーション」
北山さんは手術してから一週間後に
退院することができました。
今後は定期的に検査を受ける
ため来院します。
「今水流智浩医師」
ステントグラフトの場合は
まだ新しい治療のため、日本では、
ステントグラフト実施基準委員会という
のがあり、定期検査が定められています。
手術後の一週間目、一ヶ月目、三ヶ月目、
六ヶ月目、一年目、あと一年後という
定期的なCT検査を行うことで合併症の発見
や追加の治療の必要性を判断してきます。
■ステントグラフト手術とは?
「佐々木梓さん」
それでは最後にアドバイスお願いします。
「今水流智浩医師」
動脈瘤というのは症状がありません。
特に自分がお腹が痛いとか胸が痛いとか
といった症状があれば非常に見つけやすい
のですが、中々自分で見つけるのは
難しいと思います。
そのために自分にとって一番いい、
かかりつけの開業医さんを見つけて
定期的に自分の体を定期健診する。
特にそういう所に留意することが
大事かなと思います。
「ナレーション」
最新医療ステントグラフトは
今後「大動脈瘤治療」の主流になる
ことから、心臓血管外科が担う役割は
大きくなります。
そこで心臓血管外科下川主任教授
にお聞きしました。
「佐々木梓さん」
先生、心臓血管外科の将来像について
教えていただけますか?。
「下川主任教授」
我々が行う手術には冠動脈バイパス手術、
弁手術、大動脈瘤手術の大きく
3つがあります。
最近では、ご高齢の患者さん、
より重症化した患者さんが増えていて
今後はステント治療、カテーテルによる
大動脈弁治療などを患者さんの体に優しい
治療が普及していくと思います。
我々も積極的に取り組んで
いきたいと考えております。
「佐々木梓さん」
動脈瘤は早期に診断し、
治療することで破裂を
防ぐことができます。
気になる方は一度診察を
受けてみましょう。