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■気管食道科とは?


一般の人達の間で気管食道科は残念ながらあまり馴染みがありません。気管食道科専門のクリニックは殆どありません。その大半は耳鼻咽喉科と一緒になっています。


今現在も器官や食道に関する病気が多数存在しているにもかかわらず、適切な治療を受けられない状態が続いています。これは気管食道科の抱えている大きな課題の一つです。


例えば喉頭アレルギー、副鼻腔気管支症候群、シックハウス症候群といったアレルギー性の疾患を患っている患者さんが適切な治療を受けるのが非常に困難状況にあります。


これらの病気は住環境の著しい変化によるもので、患者の数は年々増え続けていますが、地方では特に難しく、県をまたいで通院されているケースも少なくありません。


どの診療科を受診すれば良いのか分からないため、多くの方が迷ってしまうのです。仕方なく近所にある病院や診療所を受診し、適切な治療を受けることを先延ばしします。


そうなると人によっては厳格な治療を長期間に渡って受けることとなり、生活の質を下げざる得ないほどにまで追い込まれてしまい、実際にそうした患者さんが少なくありません。


これは何も特殊な事例ではなく、日常的に起こっている問題です。


ちなみに気管食道科領域の疾患と症状は以下のとおりとなっています。


(1)異物

(2)誤嚥

(3)嚥下障害

(4)胸やけ

(5)せき

(6)窒息

(7)肺炎

(8)咽頭炎・扁桃炎

(9)急性気管炎

(10)食道がん



気管食道科は、上述したような気管や食道に関する疾患を専門的に診断および治療します。これらに関連したアレルギー性の疾患も気管食道科の領域の範囲になります。


一般的には気管食道科よりも呼吸器科のほうが浸透しているわけですが、同じ領域にある疾患を取り扱っていますので、気管や食道に関する知識を幅広く深めることができます。


これにより、身につけた知識やスキルを日常生活において役立てることができるのは勿論のこと、例えば高齢者を対象とした介護関連施設で働く場合も非常に役に立ちます。


というのも利用者の大半は65歳以上の高齢者であるため、誤嚥、誤飲といったトラブルだけでなく、嚥下障害に苦しんだり、突発的な肺炎を引き起こすケースもあります。


こうした高齢者に多く見られる疾患に対して適切な対応ができるのは大きな強みです。




■気管食道科の仕事


気管食道科は大学病院や総合病院など大型病院だけでなく、町中にあるクリニックなども耳鼻咽喉科などと併設しているケースが多いので、より幅広い知識が必要となります


このため気管や食道の疾患や症状があったとしても、大抵の患者さんは気管食道科を受診することはありません。まず内科か外科のいずれかを受診することになります。


医師の診断によって気管食道科領域の疾患であると判明した場合のみ気管食道科に送られますので、患者さんが自らダイレクトに気管食道科を受診するケースは少ないです。


また、喉にものが詰まったり、呼吸が突然苦しくなったり、食事中に強い胸焼けを起こす、といった症状に突然襲われて救急搬送された場合は気管食道科を受診することもあります。


季節によっては誤嚥が極端に多くなります。例えば年末年始は暴飲暴食で過ごす人も多く、食べ物をのどに詰まらせたり、酔っ払って変な物を飲み込むこともあります。


また、小さな子さんはすぐに口に物を入れようとしますから、この点は要注意です。


ですので、気管食道科で働く看護師さんは、幅広い年代の患者さんを対応することになるので、どうしても一段上の「コミュニケーション能力」が必要となります。





■気管食道科で働く難しさ


特に小さなお子さんと高齢患者さんの対応は簡単ではありません。突然トラブルが生じるケースも多く、常に冷静な対応が求められますので、慣れるまでは戸惑います。


誤嚥したお子さんが来院した場合は、体を逆さに吊るした状態で子供の背中を叩きます。このときお子さんに対応しながら親御さんを同時に見ていなければなりません。


我が子を心配するあまり、取り乱してしまうことが少なくないからです。


看護師さんが一生懸命飲み込んだものを吐き出させようと背中を叩いている姿を虐待しているように感じてしまう親御さんがたまにいますので、十分注意しなければなりません。


特に初産のママさんは、何からなにまで初めてのことなので、些細なことで動揺します。我が子の姿を診て居ても立ってもいられなくなり、ヒステリーを起こすこともあります。


しかし、お子さんが泣き出したり、声をだしてくれたら大丈夫です。


病棟では高齢患者さんを中心に痰を詰まらせてチアノーゼが出現することも多いです。


慌てて吸痰することになるわけですが、高齢患者さんは、自分で排痰できない場合も多いので、いきなり複数の患者さんに吸痰しなければならなくなることもあります。


こうした作業を日常的に行なうので、気管や食道に関する病気の対応ができる看護師さんを介護関連施設で強く求めています。それくらい重要なスキルと知識になります。


ただし、幅広い看護業務を身につけたい方には向いていません。また、同様に専門看護師や認定看護師を目指しているキャリア志向の方も気管食道科には向いていません。