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今回ご紹介させていただく動画は、
帝京大学医学部附属病院の畑中裕己医師
による最新の「脳梗塞治療」について
大変分かりやすく解説しています。


脳卒中は、ガン、心臓病に続いて日本人
の死亡原因の第3位につけています。


従来脳卒中は、一命を取りとめても、
必ず重度の後遺症が残るとされてました。


また、カテーテル治療は医師によって
技術差が激しいため、患者側が求める
医療サービスを提供できているとは、
言いがたい状態にありました。


しかし、新薬による治療法が確率された
ことによって、劇的に改善されています。


細かい制約は色々ありますが、それでも
数年前には考えられない状況にあります。



今回の動画も15分以上ありますので、
非常に長いですが、お時間のあるときに
ご覧いただければ幸いです。
 
 
 

 
 



■脳卒中は死亡原因第3位


「ナレーション」

日本人の国民病と言われる「脳卒中」
の患者はおよそ137万人。


死亡者数は年間13万人を超え、
がん、心臓病に次いで日本人の
死亡原因の第3位です。



「佐々木梓さん」

突然発症し、一度起こると多くの場合、
重い後遺症が残る不治の病だと恐れられ
ている脳卒中ですが、いくつかの
種類があるといいます。




■脳卒中の原因とは?


「ナレーション」

脳卒中は脳の血管が詰まって起こる
「脳梗塞」、脳の中の細い血管が破れて
起こる「脳出血」、脳の血管にできた
小さなコブが破れる「くも膜下出血」
の三種類に分けられます。



「畑中裕己医師」

脳梗塞は救命率いう点では高くなって
きましたが、「急性期」を過ぎても
後遺症を残す可能性があり


これまで、普段行ってきた生活の質が
非常に落ちてしまうという意味で極めて
重大な病気であると思います。


これまでは脳梗塞を起こした患者さんに
対する最も優れた治療法はカテーテルに
よる血管内治療といったものでしたが、
タイミングや場所は限られており


一度梗塞を起こしてしまいますと、
その後遺症といかに向き合ってリハビリ
していくかということが大部分で完成
した症状から回復することは
困難でありました。


しかし2005年に梗塞を起こしている
血栓を溶かす血栓溶解薬がようやく
日本でも認可されまして


発症してから早い段階で投与できれば
根本的な治療が可能になりました。


このような新しい治療法ができたことで
なすすべがなかった脳梗塞治療に明るい
光がさしてきたと言えると思います。



「佐々木梓さん」

画期的な薬が開発されて重い後遺症に
悩まされるのを回避することができる
ようになったという脳梗塞の治療


そこで今回は脳梗塞の治療の流れと
新しく加わった治療法について
見ていきます。




■脳梗塞の新しい治療法


「ナレーション」

帝京大学医学部附属病院 
神経内科医局長畑中裕己医師、
脳梗塞は新しい治療法が開発されて
重篤な後遺症を避けることができるよう
になり、根治的の治療への道が
開かれたといいます。



「佐々木梓さん」

重い後遺症を避けることができる
という薬はどんな薬なんでしょうか?。



「畑中裕己医師」

「t-pa」と申しまして、脳の血管に
詰まっている血栓(血の塊)
を溶かす薬です。


アルテプラーゼという薬を静脈内に投与
することで詰まっている血栓を溶かし、
脳の血流を速やかに再開させる
ことが出来ます。


この薬は脳梗塞発症してから
三時間以内に使うことができれば、
大きな効果が得られます。


しかし、三時間を超えてから使いますと、
残念ながら「脳出血の危険性」が
高くなります。


したがって、この薬が使えるかどうかを
判断することが後遺症を回避するために
非常に大切となってきます。


我々は発症した時刻についてできるだけ
正確な情報を入手し、「t-pa」が使える
かどうかの判断をいたします。




■種類により治療法が異なる


「佐々木梓さん」

脳梗塞の3つのタイプをもう少し詳しく
教えていただけますか。



「畑中裕己医師」

脳梗塞の治療は時間との戦いです。


血流が消えた瞬間から
時間の経過と共に脳細胞の
ダメージが始まってくるからです。


脳血管の循環の途絶え方は3つあり
まして、原因により治療法、発症の
仕方が違ってくるのです。



「ナレーション」

脳梗塞のタイプの一つは脳の中の太い
血管が動脈硬化を起こし


血管の壁の中に「アテローム」という
コレステロールがたまり


血管の内宮が狭くなった部分に血小板が
集まってきて「血栓」ができ


その血栓が次第に聞くなって
血管を詰まらせることで起こる
アテローム血栓性脳梗塞です。




■アテローム血栓性脳梗塞


「畑中裕己医師」

アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化を
起こしたり、進行させたりする高血圧や
高脂血症、糖尿病など生活習慣病が
主な原因で、ゆっくりと気づかない
うちに進行していくのが特徴です。


その前兆「頸動脈エコー」やMRAといった
脳の血管の評価することによって、
予測することも可能なタイプです。




■ラクナ梗塞


「畑中裕己医師」

二番目のタイプは脳の中の細い血管に
起きた動脈硬化が原因で起こる
ラクナ梗塞です。


脳梗塞の中では比較的軽症で済むタイプ
ですが、数が多いと頭の回転が悪く
なったり、認知症の原因になるのです。



「ナレーション」

ラクナ梗塞は、高血圧の圧力が細い血管
の内壁にかかり、その部分が動脈硬化
を起こして血管の内宮が狭くなり、
血流が途絶えることで起こります。




■心原性脳塞栓症


「畑中裕己医師」

3番目のタイプは心原性脳塞栓症です。


心臓の中にできた血栓が頸動脈を通り
脳に運ばれ、脳の太い血管を詰まらせて
しまうタイプですが、急に発症すること
が特徴で最も重い障害を残すことがあり
命に関わることもあります。


普段健康な血管に障害が起こりますので
事前の脳の評価をしても、予測すること
が出来ず、日頃の不整脈や心臓の
検査が重要となります。




「ナレーション」

この心臓できる血栓は、血小板の周りが
フィブリンというタンパク質で固められ
ているために、大きくて溶けにくい
という性質があります。



「畑中裕己医師」

心原性脳塞栓症は、手足の運動マヒや
感覚障害、意識障害などが一気に現れ
まして、発症すると最も症状が
重いのが特徴です。



「佐々木梓さん」

脳梗塞には重い後遺症というイメージ
が付きまといますね。


そこで発症した時どのように治療して
いくのかを見ていきますが、その前に
このコーナーです。




■脳と血液


「ナース」

ドクター、今回は脳と血液の関係
についてですね。



「ドクター」

そう、心臓が1分間に送り出している
血液の量はどのくらいだったか
覚えているかい。



「ナース」

もちろん約5リットルですね。



「ドクター」

そのとおり、では、そのうち脳には
どのくらい送られているか
知っているかな。



「ナース」

えっと、脳は小さいから
4%から5%くらいですか。



「ドクター」

いやいやいや、脳が受け取っている
血液量は、心臓が送り出している血液量
のおよそ20%にもなるんだよ。



「ナース」

え〜?随分多いんですね。



「ドクター」

脳の重さは成人の体重のわずか2%ほど
にすぎないことを考えると、いかに脳が
沢山の血液を受け取っているか
が分かるだろう。



「ナース」

ホントですね。



「ドクター」

これは脳がどの臓器よりも新陳代謝が
旺盛で大量の酸素やエネルギーを使って
活動しているにもかかわらず


酸素やブドウ糖を蓄積できないという
特殊な性質があるからなんだ。


だから常に大量の血液から
酸素やブドウ糖を供給しなければ
ならないんだよ。



「ナース」

それで血流が少しでも途絶えると、
脳はすぐにダメージを受けて
しまうんですね。



「ドクター」

うん、そのとおり。




■救急搬送される患者の対応


「ナレーション」

脳梗塞の患者のおよそ80%が
救急車で運ばれてくるといいます。



「畑中裕己医師」

脳梗塞の治療は一刻を争います。


患者様がまず中に運ばれましたら、
モニターを装着して、バイタル
サインを測定します。


バイタルサインっていうのは、
血圧とか脈とか呼吸回数とかですね。


そのあとに意識レベルを評価します。


意識障害がなければ、
その次に手足の動きがどうか?。


それから目の見え方とか、
しゃべり方とか、感覚とか、
そういった異常がないかどうか
確認してまいります。


脳梗塞と似た病態が沢山ありまして、
そういった病態を迅速に否定して
いかなければならない


で、脳梗塞の可能性が高くなった
場合でも、さらにその脳梗塞には色々な
病態が含まれているので、さらに詳しく
調べていく必要があります。


この脳梗塞に対して最近使われだした
新しいお薬が使えるかどうかということ
を知って、きちんと確定するには、
どうしてもCTスキャンが
必要になります。


しかしながら、CTスキャンの前にご家族
あるいは本人から今までのご病気とか、
それから生活習慣ですとか


そういったことを詳しく聞いて、
脳梗塞に対する新しいお薬が使えるか
どうか、チェックリストに記入していく
そういった作業をしてまいります。


患者さんの脳梗塞を確定するには、
CTスキャンを絶対撮らなければ
いけませんよね。


で、CTを撮った時に患部が
白かった場合、これは出血です。


くも膜下出血とか高血圧性脳出血
とかですね、そういった物は白く
写ってまいります。


で、脳梗塞の場合にはどういうふうに
写ってくるかというと、時間が経って
しまえば、黒く写ってまいりますし


まだ発症して間もない、
早い時間帯であれば、白くもない、
黒くもない、一見正常に見えてきます。


実は新しいお薬を使う場合には3時間
という制約がありますので


そのことを念頭に置きながら専門医に
引き継いでいくということになります。




■脳梗塞の予防法


「佐々木梓さん」

重い脳梗塞で苦しまないためには、
どんなことに注意すれば
よいでしょうか。



「畑中裕己医師」

脳梗塞を起こす前触れの発作を
一過性脳虚血発作(TIA)といいます。


一時的に脳梗塞のような症状が現れるん
ですが、そのほとんどが24時間以内に
消えてしまうのが特徴です。


運動障害としては、
身体の左右どちらかが、
急に力が入らなくなったり、
動かせなくなります。


感覚障害としては、
身体の左右どちらかが痺れたり、
感覚が鈍くなったりします。


上手く喋れない、言葉が出てこない、
といった症状が起こります。



「ナレーション」


また、バランス感覚の障害としては、
ふらついたり、足がもつれたりして
上手く歩けなくなります。


ぐるぐると回転するようなめまいが
起こることもあります。


視覚障害としては物が二重に見えたり、
両目ともに視野の片側半分が欠けたり、
片側の目が見えなくなるといった
ことがあります。


前触れ発作は多くの場合、
一週間から一か月以内に本格的な
脳梗塞を起こす危険性が高い
とされています。


軽いTIAであっても脳梗塞の警告として
受け止めることが大切です。



「畑中裕己医師」

脳梗塞の診断と診療は早ければ
早いほど重い後遺症を回避できる
確率が高くなります。


軽いTIAであっても、
その発作を見逃さないようにする
ことが最も重要です。


少し様子を見ようとか、
すぐに良くなったからとか、
今は夜だから明日になってから、
というのでは手遅れに
なってしまいます。


「決して放置しない」、
これが鉄則です。



「佐々木梓さん」

TPAという新しい薬が登場し、
思い後遺症から救われるようになった
脳梗塞の治療、その新しい薬を使うため
にも、見逃しがちな日々のちょっとした
身体の異変、TIAをしっかりとキャッチ
するように気を付けたいですね。