■今回のテーマはもやもや病
今回ご紹介させていただく動画は、帝京大学医学部附属病院脳神経外科の古屋一英医師による「もやもや病」の症状や治療法などについて大変分かりやすく解説しています。
モヤモヤ病は若年性脳卒中の代表的な疾患の一つで、発症する年代のピークが10代と30〜40代の2つあり、直接的な原因が不明のいわゆる難病疾患に指定されています。
症状としては、めまいや発作、頭痛、吐き気といった症状が日常的に繰り返されます。
中々異常に気が付けないので、治療がどうしても遅れてしまうといった問題があります。
今回はモヤモヤ病とはなんぞや?からはじまり、モヤモヤ病検査、モヤモヤ病と診断されてしまったた場合の日常生活の過ごし方までを非常に分かりやすく解説しています。
出典:帝京大学医学部附属病院
■もやもや病とは?
「佐々木梓さん」
みなさんは、もやもや病という病名を
聞いた事があるでしょうか?。
脳梗塞や脳出血といった脳の血管に
起こる病気の一種で若年性脳卒中の
代表ともいえる病気だそうです。
脳梗塞や脳出血を起こす病気と
聞くと深刻な病状も予想されますね。
「ナレーション」
モヤモヤ病、別名
ウイリス動脈輪閉塞症といい、
1960年代に日本人が最初に発見した
ことから、もやもや病という日本名が
国際的に広く使われています。
日本での年間発症頻度は10万人当たり
0.35人、最近では症状が現れて
いない患者も脳ドックで発見されるなど、
10年間でおよそ2倍に増加して
現在日本の患者数は7700人
と推定されています。
「古屋一英医師」
モヤモヤ病は、若年性脳卒中の
代表的な疾患に分類されます。
いまだに基本的に根本的な原因は
分かってないんですけども、
民族差というのが
明らかに存在しまして、
日本人をはじめとして、
韓国とか中国とか東アジア人に多く
欧米人には非常に少ないという
特徴があります。
男性1に対して女性1.8と女性に
多くみうけられます。
また家族内発症といいまして、
遺伝性ですね、ご家族それから
兄弟の発症というのがモヤモヤ病
全体の中で約10%に見受け
られるといわれています。
「ナレーション」
モヤモヤ病の発症年齢には
10歳前後と30歳から40歳前後の
2つのピークがあり
10歳前後は脳への血流が低下する
脳虚血症状が全体の60%から80%を
30歳から40歳では脳の血管が破れて
出血を起こす脳出血が多く
子供と大人では発症が違うのが
特徴だといいます。
「佐々木梓さん」
年齢によって違う症状が現れるという
モヤモヤ病、なぜこのようなことが
起こるのでしょうか?。
今回はモヤモヤ病をはどんな病気で
どんな治療法があるのかを見ていきます。
■なぜモヤモヤ病というのか?
「ナレーション」
モヤモヤ病のエキスパート
帝京大学医学部附属病院 脳神経外科
古屋一英医師、モヤモヤ病は早期に
発見することが何よりも大切で
適切な治療を行えば、
通常の社会生活が送れるといいます。
「佐々木梓さん」
なぜモヤモヤ病というのですか?。
「古屋一英医師」
若年性脳卒中の代表疾患である
モヤモヤ病の患者さんの頭の中の
血管をDSAという脳血管撮影装置
で写してみますと
本来あるべき血管の代わりに
非常に細かく発達したチリチリとした
血管が造成しています。
このチリチリとした血管をいわゆる
側副血行路といいます。
この側副血行路が煙のように
もやもやとして見えることから
モヤモヤ病と名付けられています。
■動脈のメカニズム
「佐々木梓さん」
その様なモヤモヤした血管は、
なぜ発達するのですか?。
「古屋一英医師」
人間の「脳の血管」というのは
大変よくできておりまして
例えば血管が細くなったりとか
詰まったりしますと、その周囲の
毛細血管が脳の血流の低下した部分を
補おうとして一生懸命伸びていきます。
それがもやもや血管となっていくと
思われております。
「ナレーション」
脳には左右の内頸動脈と脳底動脈から
中大脳動脈と前大脳動脈、後大脳動脈を
経てくまなく血液が供給される
ようになっています。
これらの動脈が互いに交通動脈で結ばれ、
輪のようなウイリス動脈輪が
形成されているのです。
「古屋一英医師」
脳の血流の一番大元となるのが
ウイリス動脈輪というところです。
この前半部のどこかに、
狭くなったりとか閉塞と言って
詰まってしまうような状態が起きると
毛細血管であるモヤモヤ血管という
のが発達してきます。
ですけどもこのモヤモヤ血管というのは
非常にモロかったりするものですから、
ときには出血を起こしたり、
あるいは十分な血液を脳に
送れなかったりして
いわゆる虚血症状というのを
引き起こしてきます。
■モヤモヤ病の症状
「古屋一英医師」
先ほどモヤモヤ病の発症には
2つのピークがあると申し上げました。
特に10歳前後のお子さんの場合には
脳への血流が低下することによって、
脳虚血症状という症状を起こす
ことがあります。
いわゆる脳梗塞に近い症状です。
例えば右半身や左半身の力が抜けて
しまう脱力発作という運動麻痺のような
症状とか、呂律が回らないといった
言語障害、また痙攣とか知能の低下を
引き起こすこともあります。
「ナレーション」
川田亜弓さんは5歳の時に突然
モヤモヤ病の症状が現れたといいます。
「川田亜弓さんのお母さん」
頭が痛いって言うときと、
吐いてしまう、一度吐いてしまうと
「もう治った」っていうような感じで
もしかしたらこの子は病気が隠れている
んじゃないかなっていう不安の方が大き
くて、最初病院に行ったのが最初です。
「ナレーション」
このような気がかりな症状は、
どんな時に起きるのでしょうか?。
「古屋一英医師」
こういった虚血症状には誘引といって
それを引き起こしやすいような
状況になることがあります。
例えばは熱いものを
フーフーして食べるとか、
楽器を吹くとか、かけっこ、
走ったりとか...
あるいは興奮して騒いだり泣いたりとか、
そうゆうことした後に行こう虚血の症状
というのが起こりやすくなります。
このような「過換気」という状況になり
ますと、血液中の二酸化炭素の分圧
というのが低くなります。
えー脳の血管というの二酸化炭素に
非常に敏感にできておりまして
二酸化炭素が減る
つまり分圧が低くなると脳の血管
というのは収縮という状況になります。
もともとモヤモヤ血管というのは
1ミリにも満たない非常に細い血管です
から、一気に脳の血流が低下すると
先ほど申し上げたような様々な
症状というのを急激に引き起こす
ことになります。
「佐々木梓さん」
成人では、どのような症状ですか?。
「古屋一英医師」
成人の方の場合は、
お子様の場合と違って、
脳出血、脳内出血とか脳室内出血という
血管がもろい血管が破れて出血する
パターンというのが大多数になります。
一般的な症状としては、やはり急激な
頭痛、急激な意識障害とか言語障害、
運動麻痺こういった様々な症状が急激に
現れるというのが特徴だと思います。
これはモヤモヤ血管に力学的なストレス
が加わることによって、もろくなった
血管が破れるることで生じます。
非常に軽い程度で、ほとんど後遺症を
残さないような方から、極めて重篤な
後遺症を残す方、または残念なことに
死亡される方と様々なのが
この出血の病態です。
「佐々木梓さん」
モヤモヤ病は子供と大人では
異なった症状が出るんですね、
同じモヤモヤ血管が原因で発症する
病気なのに不思議ですね。
その診断と治療法を見ていきますが、
その前にこのコーナーです。
■脳の役割
「ナース」
ドクター今回は脳の役割についてですね。
「ドクター」
そう、脳は体全体の働きをコントロール
するために運動や感覚や聴覚や視覚、
言語などそれぞれの機能を受け持つ場所
が連携しながら、的確な指令を
常に出しているんだよ。
「ナース」
それじゃ、脳は一瞬も休めませんね。
「ドクター」
うん、だからは脳の全てが正常に働ける
ように血管がもう全体に張り巡らされて
大量の新鮮な血液を休むことなく
脳に届けているんだよ
もしその血管のどこかで血液が
滞ったらどうなると思う。
「ナース」
大変!そうなったらその部分の脳は
十分に働けなかったり、機能が
止まってしまいませんか。
「ドクター」
そのとおり!そのような状態になって、
脳のある部分に血液が届かなくなった
結果、発症するのがもやもや病なんだ。
■モヤモヤ病の診断と検査
「佐々木梓さん」
モヤモヤ病はどのように
診断するんですか?。
「古屋一英医師」
モヤモヤ病は原因不明であることも
あって、日本では、厚生労働省が
指定する特定疾患、いわゆる難病
に指定されています。
で、診断は厚生労働省の研究班によって
作られた診断基準というのがあります
ので、これに従って診断をします。
検査はMRAと言って脳の血流の状態を
評価する方法を使って、どこが狭く
なったかとか、どこにモヤモヤ血管
があるかというのを評価します。
またMRIといって脳の断面断層画像を
作りまして、モヤモヤ血管の状況
というのを見ることができます。
「ナレーション」
これが大脳基底核部のMRI画像です。
もやもや病の場合、
このように脳の輪切り状態の
MRI画像にはたくさんの黒い点々
が抜けて見えます。
この黒い点々は無数に発達した
モヤモヤ血管の断面が見えているのです。
「古屋一英医師」
このような画像を検査することで
モヤモヤ病の確定診断をすることが
可能となります。
また、脳出血の場合にはCTスキャンを
行うことで診断がつきます。
但しCTスキャンでは、出血をしてる
かどうか、血管が詰まって脳梗塞に
なっているかどうかということしか
診断ができないので
MRIと組み合わせることで
診断をつけなければなりません。
「川田亜弓さんのお母さん」
あまり聞いたことがない病名だったので、
あのーまあ頭の中が真っ白になって
しまったというか
悪いことばかり考えてしまって、
将来的にもうホントに心配になって、
あのホントに不安でいっぱい
になりました。
■モヤモヤ病の治療とは?
「佐々木梓さん」
モヤモヤ病にはどんな
治療法がありますか?。
「古屋一英医師」
モヤモヤ病の治療の目的は、
脳虚血を繰り返すことで脳組織
にダメージが加わって
ひいては脳梗塞になっていきますので、
それを予防するための治療という
ことになります。
えー具体的には、一過性の脳虚血発作
という脳梗塞に似たような症状を予防
するということで、これに対しては、
手術が必要になります。
「ナレーション」
一過性脳虚血発作に対する有効な
治療はバイパス手術です。
バイパス手術には直接的血行再建術と
間接的血行再建術があります。
「古屋一英医師」
直接的血行再建術というのは、
脳血流が低下した部分の脳に対して、
「頭皮」頭の皮膚の血管を直接つないで
あげる手術になります。
今まで皮膚を養っていた血液の流れ
が直接脳の血管に入ることによって、
これまでの症状を速やかに回復させる
ことができます。
間接的血行再建術というのは頭蓋骨より
も外側つまり皮膚とか筋肉とか
あるいは脳を包んでる
膜のような組織を直接脳の表面に
接着あるいは移植をすることに
よって行う手術です。
血流の足りない脳の中に自然なかたちで
血管が入り込んでいって
脳の血管と交流を持って、
血流が脳の中に入っていくことが
確かめられています。
「ナレーション」
直接的血行再建術と間接的血行再建術は、
それぞれ単独的に行うだけでなく
組み合わせることで脳虚血による発作を
改善するとともにモヤモヤ血管を
退縮することができるのです。
これは脳の血流を撮影したスペクト画像
です。青い部分は血流が少なく
黄色から赤になるに従って血流が多く
なっている部分です。
手術の後、血流が改善していることが
分かります。川田亜弓さんは早めに
見つかり、適切な治療ができました。
「川田亜弓さんのお母さん」
あの高校生となって、
あの元気に楽しく毎日を
過ごしています。
「古屋一英医師」
成人のもやもや病の患者さんの脳出血は、
非常に高い率で繰り返し出血ををする
ということは分かっています。
どのような治療をするかというと、
開頭と言って頭をあけて「血腫」血の塊
をとったりとか、お薬を使って「脳圧」
脳の圧をコントロールするような、
そういうふうな治療がメインになります。
■医師からのアドバイス
「古屋一英医師」
モヤモヤ病はいまだに脳底の動脈が
どうして狭くなってくるのかという
ことが解明されていない病気です。
特にお子さんの場合には脳血流が
低下した状態が長引けば長引くほど、
いろんな症状ひいては知能低下とか
重篤な症状を引き起こすことに
つながりかねませんので
なるべく早く発見をして治療することが
肝要だと思います。
その意味でも、日常のちょっとしたこと、
片方の手足の動きが悪いとか
力が抜けてしまう、
あるいは言葉がもつれるような
言語障害とか、けいれんを起こすとか、
こちらの言ってることの言葉の意味を
理解できていないとか
過換気の時に送る症状、
それからめまいとか頭痛このような
症状をなるべく早く見つけてあげる
ということは大事になると思います。
「佐々木梓さん」
モヤモヤ病の根本的な原因は分かって
いないとはいえ、早くに見つけて適切な
治療を受ければ健常の子供たちと同じく
普通に生活できるということでした。
早期発見、早期治療がカギのようですね。