73.png





■今回のテーマは糖尿病治療


今回ご紹介させていただく動画は、帝京大学医学部内科学講座の江藤一弘医師によって、
「糖尿病」の原因や症状、そして新薬による治療法について分かりやすく解説しています。


糖尿病というと、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症といった重篤な病気
を引き起こしてしまう合併症リスクが高く、つねに危険な病気のイメージがありました。


しかし、最近はDPP-4阻害薬という新薬が登場したことにより、患者さんのQOLが向上し、
インスリンを打たなくても良くなったので、患者さんの心と体の負担を大きく減りました。


まだ、市場に投入されたばかりなので、デメリットの部分が明らかになってませんが、
糖尿病患者が危機的なレベルで増え続けている状態において期待する声は大きいです。


今回は糖尿病とはなんぞや?からはじまり、糖尿病が発症する仕組みや最新の糖尿病治療
について分かりやすく解説していますので、メタボ対策に取り組んで頂ければ幸いです。
 
 
 
出典:帝京大学医学部附属病院
 
 
 

 
 
 


■急速に増え続ける糖尿病


「ナレーション」

日本人の糖尿病患者数は
およそ890万人。


予備軍の人を含めると
およそ2210万人と
推定されています。


これは成人の5人に1人が
糖尿病にかかっているという
計算になります。



「佐々木梓さん」

現代病と言われる糖尿病は
全身にさまざまな障害を起こす
恐ろしい病気というイメージが
ありますね。


しかもその患者数は現在も大変な
勢いで増え続けているといいます。



「ナレーション」

糖尿病患者数の増加率は
過去50年間に40倍になり、
そのカーブは急角度の右肩上がり、
日本では急速に糖尿病が増加しつつ
あることがわかります。




■インスリンが分泌される仕組み


「江藤一弘医師」

私たちは生きていく上で必要な栄養素
を食事から摂取しています。


その中でも糖質は胃や腸で消化・分解
を受けてブドウ糖となります。


私たちの体の中には血中のブドウ糖
濃度を一定にする仕組みがあります。


そのカギを握っているのがすい臓から
分泌されるホルモンである
インスリンです。



「ナレーション」

インスリンを分泌しているすい臓は、
私たちの体の胃の後ろ背中側にあり、
十二指腸や胃などに囲まれる
ように位置しています。


すい臓の組織を顕微鏡で見ると、
島のように見えるランゲルハンス島
という場所があります。


この中のβ細胞から血液中のブドウ糖
の濃度を下げる働きをするホルモン
「インスリン」が分泌され


もう一つのα細胞からブドウ糖の
濃度を上げる働きをするホルモン
「グルカゴン」が分泌されています。


血液中のブドウ糖の濃度はこの2つの
ホルモンのバランスで調整されています。




■糖尿病が発症する仕組み


「江藤一弘医師」

インスリンの絶対的な分泌量が
結合したり、あるいは相対的に
分泌が保たれていても


細胞におけるインスリンの働きが
低下した場合、このような場合は
血中のブドウ糖濃度を一定の濃度
に保つことができなくなります。


このな状態で発症するのが糖尿病です。



「ナレーション」

糖尿病は大きく2つに分けられ、
その一つは1型糖尿病。


インスリン分泌が絶対的に不足して
インスリンを補う必要のあるタイプ。


もう一つは2型糖尿病。


インスリンの分泌が悪いタイプと分泌
されていても、作用が悪いタイプ。


日本人の糖尿病患者の95%が
この2型糖尿病です。


糖尿病の治療は食事を制限する食事療法
体内のブドウ糖の代謝を促す運動療法
飲み薬でインスの分泌を促したり


インスリンを直接注射する薬物療法の
三つが従来から三大療法として
行われてきました。


しかし最近全く新しい方法で糖尿病を
治療する薬が登場したといいます。




■新薬による糖尿病治療に期待


「江藤一弘医師」

それはインクレチン関連薬の
DPP-4阻害薬というお薬です。


2009年の10月に日本でも
認可されています。


このお薬は、これからの糖尿病の治療を
変革する可能性があるのではないか
ということで、専門医の間でも
注目されています。



「佐々木梓さん」

新しい薬の登場で多くの患者さんを
救うことができるかもしれない
という糖尿病の治療。


そこで今回は新しく加わった
最新の糖尿病治療薬について
見ていきます。




■従来の薬の限界とは?


「ナレーション」

帝京大学医学部内科学講座江藤一弘教授
インスリン分泌を専門とする教授は


新しく登場した薬は患者さんにとって
明るい未来が開けるかも知れない
といいます。



「佐々木梓さん」

1型と2型の糖尿病は
どんなところが違うんですか?



「江藤一弘医師」

1型糖尿病は若年発症が典型的です。


インスリンを作るベータ細胞が
自己免疫やその他の要因によって
破壊されてしまい


インスリン分泌がストンと
落ちてしまいます。


その結果、すぐにでもインスリン補給
しなければなりません。


これに関して日本人で圧倒的に多い
2型糖尿病は「インスリン」分泌する
ベータ細胞が加齢や肥満、運動不足、
ストレス、高脂肪食...


その他の遺伝的要因によって次第に
インスリンを分泌するβ細胞が疲弊して
その数がだんだんと減って
きてしまいます。


そして2型糖尿病が発症する時点では、
健常人の方の約半分にまでβ細胞の数が
減っているといわれています。


2型糖尿病に対して従来から
使われていたお薬はインスリン
分泌するベータ細胞を刺激して


そこからのインスリン分泌を高める
スルホニル尿素剤(SU薬)という
薬がよく使われていました。


この薬は古い歴史を持っていて、
最初は非常によく効きます。


しかし、やがて右肩下がりで
効果が弱くなってきます。


一旦分泌のカーブを持ち上げても、
結局は同じ傾きでカーブが落ちて
きてしまうんです。




■DPP-4阻害薬の特徴とは?


「江藤一弘医師」

DPP-4阻害薬はすでにアメリカは
3年半前から臨床で使われています。


日本でも2009年の10月に認可され、
12月から発売されています。


このお薬の作用メカニズムは
まだ完全には解明されていません
けれども、膵β細胞からのインスリン
分泌を高める働きがあります。


また、ラットやマウスではインスリンを
分泌する膵β細胞の数を増やすという
作用が確認されています。



「ナレーション」

DPP-4阻害薬がベータ細胞の数を
増やすという作用は現在のところ
動物実験の結果です。


そのためまだそのまま人間にも
当てはまるとは言い切れない
状態にあります。



「江藤一弘医師」

しかし、インスリンを分泌する
ベータ細胞の数そのものを増やすことが
できる可能性があるということは...


自前のベータ細胞から自前のインスリン
をいつまでも分泌させ続けることが
できるということを示していますので


糖尿病の治療に大きな変革をもたらす
可能性があると考えています。



「佐々木梓さん」

糖尿病の治療を大きく変えるかもしれ
ないという新しい薬その薬をもう少し
詳しく見ていきますが...


その前にこのコーナーです。




■ブドウ糖と体の仕組み


「ナース」

ドクター、今回はブドウ糖と
体についてですね。



「ドクター」

そう!食べ物の三大栄養素といえば
なんだったか知っているかい?。



「ナース」

え〜っと、糖質と脂質とタンパク質です。



「ドクター」

そのとおり!中でも糖質は最も大切な
エネルギー源で小腸で吸収された糖質は
肝臓でブドウ糖に返還されて血液に
乗って体の隅々まで運ばれ最も早く
細胞のエネルギー源になるんだ。



「ナース」

だからスポーツの時にバナナなどを
積極的に摂る選手が多いんですね。



「ドクター」

そうだね。特に脳や神経はブドウ糖を
唯一のエネルギー源としているし、

全身の筋肉や臓器もブドウ糖を
エネルギーとしているんだよ。



「ナース」

ブドウ糖ってすごく大切な
ものなんですね。



「ドクター」

こうして全身で使われたあと余分な
ブドウ糖は筋肉や肝臓にグリコーゲン
として蓄えられたり


脂肪細胞に蓄えられたりしてエネルギー
が不足した時にそれが分解されて
使われるんだ。



「ナース」

それはブドウ糖が取れなくなったときの
ために備えているとゆうことですか?。



「ドクター」

そう、ブドウ糖が細胞に取り込まれる
時に働いて血液中のブドウ糖の量を
下げるのがインスリンで...


体に蓄積しているグリコーゲンを
ブドウ糖に戻して血液中のブドウ糖の
量を上げるのがグルカゴンなんだ。


この2つのホルモンバランスが崩れて
しまったらどうなると思う。



「ナース」

大変!ブドウ糖が血液の中に
どんどん増えてしまいませんか?。



「ドクター」

そのとおり!体がそんな状態になって
しまう病気が今回のテーマ糖尿病なんだ。




■新薬による糖尿病治療とは?


「ナレーション」

新しい薬DPP-4阻害薬を使い始めて
2か月余りだという大島健一さんは...



「大島健一さん」

長い間他の薬を飲んでてですね、
まあ自分であのーうん効いてるなって
いう感じを受けたことは一度も
ないんでですね


まあ今度のお薬というのは、あまりにも
効きめが早く現れるもんですから


これはもう根本的に何かお薬の仕組みが
違うんだなというのは、素人でもわかる
ようなきがします。はい。



「佐々木梓さん」

新しい薬はどのような仕組みで糖尿病に
効果を発揮するのですか?。



「江藤一弘医師」

新薬のDPP-4阻害薬は、その名の通り
DPP-4という酵素の活性を
阻害する薬です。


血糖値を下げるホルモンとして
インスリンが発見された当初、
血糖値を下げるホルモンは本当に
インスリンだけなのかと疑問に
考える医師たちが多くいました。


ブドウ糖が吸収される場所である
腸管から何か別の物質が分泌されて
いるはずだと仮定し...


これをインクレチンと呼びました。


研究の結果、腸管から分泌される
インクレチンの一つとして、
活性型GLP-1ホルモンが
同定されました。


それから活性型GLP-1ホルモンの
研究が進み、このホルモンが血糖値が
高い時に膵臓のベータ細胞に働きかけて
インスリン分泌を高めることが
わかりました。


一方でその活性型GLP-1ホルモンにも
欠点があり、分泌されてすぐ、ごく短い
時間でそのほとんどが分解されてしまう
ため、膵臓のベータ細胞に達するまでに
そのほとんどが失われてしまうという
ことがわかりました。



「ナレーション」

その後研究はさらに進み、
活性型GLP-1を分解してしまう
物質とは何かを追求。


そしてついにDPP-4という
酵素が見つかったのです。




■新薬による治療の効果とは?


「江藤一弘医師」

つまり新しい薬であるDPP-4阻害薬は
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞の
働きを助けるホルモン


活性型GLP-1ホルモンを分解してしまう
DPP-4の働きをブロック、阻害すること
でより多くの活性型GLP-1ホルモンが
膵臓のβ細胞に到達するようにし


最終的に出た細胞がインスリンを
たくさん分泌するように働きかける薬
それが「DPP-4阻害薬」という
ことになります。



「大島健一さん」

正直あの自分自身将来はですねぇ、
やっぱりみんなと同じようにインスリン
でも打つのかなと思ってましたけども


自分はこれでインスリンなんか
打たないでですね。


人生を送れるのかなというふうに
思ってですね、大いに期待しています。




■帝京大学医学部附属病院の地域と連携した新しい試みとは?


「ナレーション」

帝京大学医学部附属病院では
糖尿病の患者さんを支える体制づくり
に力を入れています。


帝京大学病院は地域の病院との間で情報
を共有するパスポートをつくり


地域と連携しながら患者さんをサポート
する試み病診連携です。


地域の病院と一緒になって
患者さんを診て行くのです。


また、医師、栄養士、薬剤師、リハビリ、
臨床検査技師など各部署の専門家が参加
して行うチーム医療も充実しています。


一人一人の患者さんについて
毎週ディスカッションを行い、
治療の成果や方向性の確認をします。


そして患者さんに参加してもらう密度の
濃い糖尿病教室を毎週開いているほか


外来の患者さんを対象にした栄養相談や
集団の患者さんに集まっていただく
栄養教室も開いています。




■新薬の将来性について


「江藤一弘医師」

もともと日本人は肥満に弱い民族だと
言われていて、体重がたった2キロ
増えただけで糖尿病を発症する
割合が三倍に増えます。


逆にちょっと体重を減らせば血糖値が
よくなることが分かっているので糖尿病
の患者さんは食事療法や運動療法で体重
をなるべく減らすという努力を欠かす
ことはできません。


新しく登場した薬DPP-4阻害薬による
治療はまだ始まったばかり


本当に効くかどうかは5年から10年の
スパンを見ていかなければならないので
過度の期待は出来ません。


今後注意して見ていく必要が
あると考えます。



「佐々木梓さん」

現代病といわれる糖尿病に最近登場した
新しい薬は、これまでの一生付き合わな
ければならないつらい病気という糖尿病
のイメージを一新して患者さんにとって
救世主となるかもしれません。


大いに期待したいですね。