
■今回のテーマは「うつ病」
今回ご紹介させていただく動画は、鳥取大学医学部附属病院 精神科 横山勝利医師により、「うつ病」の原因や症状、治療法について分かりやすく解説しています。
ここ日本では「うつ病」は、症状の差こそあれど、すでに7人に1人の割合で発症していますので、誰でもなり得る病気なのですが、依然としてうつ病の認識は低いです。
多くの方々がうつ病のような精神疾患は心の病気であるため、心を強く持てば発症しないと考えていますが、これは間違いで、うつ病は脳の一部が障害を起こしている状態です。
外を散歩すなどの気分転換で治るのはうつ病とはいいません。ですので、深刻なんです。
中でも最近注目を集めているのが、高齢者の間でうつ病が急増している点です。
もし何も政府が対策を打たなければ高齢化社会が2025年でピークを迎えるまでは、それに呼応する格好でうつ病患者が増えていくことになってしまいます。
それを避けるためにも正しい知識を身につけてお互いに支え合うことが必要になります。
今回は「うつ病とはなんぞや?」からはじまり、うつ病が発症する仕組みや最新のうつ病検査・治療にについて分かりやすく解説していますので、参考になれば幸いです。
出典:聞いて納得!! 医療最前線
■高齢者のうつ病
「本池美香さん」
みなさんお元気ですか?。
本池美香です。
うつ病は働き盛りの人に
多い病気と考えられていますが、
最近増加傾向にあるのが、
高齢者のうつ病です。
そしてこの病気の症状としては、
引きこもる、イライラや不安感、
妄想を抱くなどの特徴があります。
中にはうつ病と思えないような症状も
ありますので、兆候を見逃さないよう
注意することが重要です。
聞いて納得!!医療最前線。第一回目の
今回は高齢者のうつ病がテーマです。
教えて頂くのは鳥取大学医学部付属病院
精神科の横山勝利助教です。
横山先生はうつ病の研究と
診療を行っています。
横山先生よろしくお願いします。
「横山勝利先生」
よろしくお願いします。
「本池美香さん」
今回のテーマ「うつ病」という
ことなんですが、うつ病と聞いて、
一般的なイメージについてですが、
気持ちが落ち込むとかですね、
意欲が出ないというようなのが
思い浮かぶんですが、実際どんな
病気なんでしょうか?。
まずはこちらでお願いします。
「横山勝利先生」
はい、準備してくださったんですけど、
憂鬱な気分がずっと続いてしまったり
ですとか、一日中続いてしまうような
ことが代表的な症状ではありますね。
お話にありましたけれども、
意欲が出ない、やる気がどうして
も湧いてこないというところが代表的な
症状ということになります。
他にも考えがまとまらなくなって
しまうというようなこともありますし、
精神的なこと以外にもですね。
例えば眠れない、入眠することが難しい
とか、朝早く起きてしまうとか
あるいは体の方が疲れやすくなって
しまうとか、こういうふうなことが
よく現れることですね。
うつ病というのは神経伝達物質の病気
といわれておりますので、気持ちが弱い
とか、環境が悪いとか、そういうことで
悪くなるわけではないので、
なるべくこのような症状が出たら早めに
医療機関を受診していただくという
ことも大事ですし
必ず改善に向っていく病気ですから、
治療を早めに受けるということが重要
だというふうに思いますね。
「本池美香さん」
ここでうつ病について町の声を
聞いてきたVTRがありますので、
先生一緒に御覧ください。
■うつ病の一般的な認識
「質問」
うつ病とはどんな病気だと思いますか?
「町の人A」
心が落ち込んだり、
上がったりするイメージですかね。
「町の人B」
ストレスや悩みから
くるのではないですか?
私のまわりにはいませんね。
「町の人C」
頑張ろうという気持ちにならない時は
もしかして自分もそうかなというのも...
「町の人D」
周りの人が親身に支えていかなければ
いけない病気だと思います。
身近な人は今2人知っています。
いつものテンションからして
すごく低かったし、仕事にも行けない
状況になっている人を知っています。
「町の人E」
私はなったことがないから分からない
けれども(自分はうつ病になることは)
ないと思いますね。
すいませんけども、
ちょっとのんきなもんだからね。
■うつ病は誰でもなりうる病気
「本池美香さん」
街の声を聞いてきました。
やはり「うつ病」を
心配される声もありましたし、
やっぱり気分が落ち込むのが
うつ病という形で先ほどの症状を
ちゃんと分かっていた方もいましたが
先生はどう思われましたか?。
「横山勝利先生」
あの非常に増えているんだなという
ふうには思いますですね。
まぁいろんなデータありますけれども、
7人に1人ぐらいはうつ病にかかると
いわれておりますので
極めて身近な病気という
ふうに思いますね。
ストレスとかですね、
まわりの環境でなるかっていう
お話もあったと思うんですけども、
そういった場合はですね、
一時的に落ち込んだり、
元気がなかったとしても、
環境が改善されたりですかね、
気持ちが気分転換とか出来て
戻っていくということが実は多くて、
状況が改善されても、
なおずっとうつ状態が長いこと続く
、あるいは2週間くらい続いて
しまうということになると、
それはうつ病かなというふうに
考えるということになりますね。
なかなか見極めが難しいですけれども
誰でもかかりうる病気であるという
ことはいると思いますね。
■うつ病に似た病気とは?
「本池美香さん」
では先生、うつ病に似た病気は
あるんでしょうか?。
「横山勝利先生」
はい。
「本池美香さん」
コチラでお願いします。
「横山勝利先生」
うつ症状が出るという病気は勿論うつ病
とか躁うつ病とかあるんですけれども
それと似た症状の出る病気、ここに3つ
あげてもらってるわけですけれども、
認知症の方がうつ状態に陥ってしまう
ことは非常によくあることですし、
発達障害、アスペルガーですとかADHD
といわれている病態の方は中々対人、
コミュニケーションが難しかったりする
ことが多くてですね、
それが二次的に憂うつになったり、
よくうつ気分になってしまう、
それがずっと続くということは
よくあることですね。
統合失調症の場合ちょっと難しいんです
けども、統合失調症の症状が強く出た
あとにうつ状態が続くというのも
よく知られていることですね。
高齢化社会が続いているということで、
「高齢者のうつ病」と呼ばれている
病態も増えているというふうに
言われていますね。
■高齢者のうつ病の実態
「本池美香さん」
では認知症と高齢者のうつ病の
似ている点を教えて下さい。
「横山勝利先生」
「認知症と高齢者のうつ病 類似点」
●画期がなく引きこもりがち
●物事に興味を示さない
●物忘れ
●心身の苦痛
はい。
類似点がとてもあるわけですけども、
4つあげてもらったんですけども、
一つは2つの病態ともに活気が
なくなって、引きこもりがちになると、
お家にいるようになってしまうという
ことがあるかと思いますね。
あと物事に興味を示さないということも
似ている点でございまして
うつ病の場合はどうしても意欲が
落ちるので、物事から興味がなくなり
ますけども、認知症の場合は、
その認知機能の問題から興味を示さなく
なるということ、現れ方としては物事に
興味を示さないということで似て
いるということがあります。
物忘れ、認知症としては主症状、
メインの症状になるわけですけども、
うつ病の方も頭が回らなくなるという
ことがありますので、
この場合どうしても物忘れもどうしても
出てくると、現れ方としてですね。
なので類似点としてあげることが
出来るということ。
心身の苦痛は、実はこれは
うつ病のメインの症状と言ってもいい
わけですけれども、認知症の方もですね。
自分の心がしんどい、
憂うつを訴えることもありますし、
体の苦痛を訴えるっていは非常に
良くあることですね。
「本池美香さん」
でもこれだけ似ていると中々見分ける
というのが難しいと思うんですけども。
「横山勝利先生」
そうですね。
「本池美香さん」
ここでどういった点が違うのかを改め
て教えていただきたいと思います。
■うつ病と認知症の違い
「横山勝利先生」
用意していただいているんですけども、
全部クリアカットにこうなっている
というわけではないんですけれども
違いとしてはですね、
うつ病は割と急に出てくることが多くて、
昨日まで大丈夫だった、ちょっと前まで
大丈夫だったのが急に引きこもりがちに
なったり、家事ができなくなったりと
いうことがありますけども、
一方、認知症というのは時間をかけて
徐々に進んでくることが多いという
ことはあげられますね。
うつ病の方は自覚症状、
ご自分がうつ状態にあるということは
よく分かっていらっしゃることが多い
んですけれども、認知症の方は自分が
認知症であることがほとんど分らない
ということになりますね。
ですから、むしろですね、患者さんと
お会いすると認知症であること、
あるいは状態を取り繕って言わないって
ことが多々ありますね。
「本池美香さん」
こういった違いを見分けていくといい
ますか、すごく大切になってきますね。
「横山勝利先生」
そうですね。まぁ日頃のその方と
全然違う正確というかね
物事をし出すと少し心配してあげる
ということが大事かなと思いますね。
■うつ病の診断方法
「本池美香さん」
では、その診断なんですけども、
どういったふうにするんでしょうか?
「横山勝利先生」
うつ病の場合は問診というか面談の中で
診察、診断を決めていくことが多いです。
チェックリストを使うような
こともありますですね。
「本池美香さん」
まずは話を聞くということ...
が大切なんですね。
では、その他にはあるんでしょうか?
「横山勝利先生」
色々なものがあるんですけども、NIRS
(ニルス)という機械がございまして、
こちらの方でうつ病のタイプという
ことが知ることができますね。
「本池美香さん」
そうなんですね。はい。
では、そのNIRSについて検査を
受けさせていただきました。
■NIRSによる検査
「横山勝利先生」
どうぞ。
「本池美香さん」
これは実際に...
「横山勝利先生」
これをかぶっていただく
ということになりますけども、
こちらにNIRS光トポグラフィーの検査
の機械ということになりますね。
脳血液量を調べるために、
このようなものをちょっとかぶって
いただくということになりますね。
「ナレーション」
NIRSは、簡単な質問に答えた時の
脳血流の変化を検査します。
「は」で始まることばを
出来るだけ多く答える。
あいうえおを発音するなどの検査です。
「本池美香さん」
結構検査自体は簡単なものなんですね。
「横山勝利先生」
そうですね。簡単な質問に答えて
いただくということになりますね。
考えているときに血液量が
増えることが多いわけですけども、
そこでその脳の局所に
どういうふうな血液量が増えるのか
というのを見てますね。
うつ病のタイプを診察していく中で
勿論面談が基本になるんですけども、
こちらの検査データの結果も参考に
しながら補助的に診断を決めていく
ということをしております。
「本池美香さん」
ということなんですが...
「横山勝利先生」
はい、この検査で全ての診断が出る
というわけではないんですけども、
先程申し上げました。うつ病のどの
ようなタイプのうつ病かというとこの
判断の補助に使わせていただいて
いることになりますね。
■うつ病の治療法
「本池美香さん」
では治療法はどういったのが
あるんでしょうか。
「横山勝利先生」
お年寄りの場合は体の方も他に病気を
抱えていることも多かったりしますので、
くすりの方を少量から副作用に注意しな
がら使っていくということになりますね。
あのどのようなうつのタイプであるかと
いうことを見極めて薬を選択して使って
いくということになりますね。
「本池美香さん」
ではですね、高齢者のうつ病を予防する
ことはできるんでしょうか?
■高齢者のうつ病予防
「横山勝利先生」
あの完全なる予防というのは、
難しいのかも分かりませんが、
例えば家庭の中で
一定の役割を持つですとか、
社会の中で社会活動に参加されてですね、
社会との関わりを持って行くとか、
そいうことで自分の気持ちを整えて
いくことが大事なんだと思いますね。
退職された方の場合、現役の頃にですね、
華々しい成果をあげた方などは、
そのときのギャップに苦しんだり、
あるいは同世代といいますか、
他の方は元気なのに何で俺は、
なんていう思いになったり、
うつ状態になりやすくなってしまうので、
開き直るというわけじゃないですけど、
今の生活を大事にして頂くということ、
楽しんで頂くことが大事だと思いますし、
その場合はおっしゃったように
趣味なり昔やったことでもいいし、
新しく見つけてもいいし、
ということでやられるととても
いいんじゃないかと思います。
「本池美香さん」
周りの方が気づくということも
重要となってくるんですかね。
「横山勝利先生」
そうですね。
うつ病あるいは認知症になる、
なっているんじゃないかと心配というか、
変化に気づけば、なるべく早くにですね、
受診していただければと思いますね。
「本池美香さん」
やはり周りの方が常に高齢者の方に関心
をもって、まぁ早期に症状に気づいて
あげるということが大切ですね。
「横山勝利先生」
おっしゃるとおりですね。
■高齢者のうつ病の症状
「高齢者のうつ病に見られる症状」
●抑うつ状態
●不安やイライラ感
●体調不良
●不眠
●妄想
「横山勝利先生」
高齢者のうつ病の患者さんの
症状なんですけれども、
気分が憂うつになる抑うつ状態が続く
ということは勿論ですけども、
不安やイライラまあ焦りが募って
しまったり、あるいは体の訴えが強く
なったり、実際に体が悪くなったり
ということもあります。
睡眠不足なんかもございますし、
(うつ病の)状態がとても
悪くなると妄想にいたる、
あるいは「死んでしまおう」と
思ってしまうこともあります。
このような状態があったらですね、
周りの方が早めに気づいてあげると
同時に早めに精神科を受診される
ことをおすすめします。