196.png



■今回のテーマは「人工内耳」


今回の動画は、鳥取大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科 頭頸部外科の矢間敬章医師によって劇的に進化した最新の「人工内耳」について分かりやすく解説しています。


聴力を失うと当然のことながら日常生活に大きな支障をきたすことになります。


何らかの原因によって聞こえを失ってしまい、補聴器でカバーすることが出来ない場合は、これまで諦めるしかありませんでした。現在でもそうした方が沢山います。


しかし、人工内耳によって聞こえを取り戻すことが可能となりました。


残念ながら人工内耳を手術によって装着できるようになればすぐに元の状態に戻るというわけにはいきません。どうしても人工内耳が拾ってくる音に慣れる必要があります。


それまで相当の時間がかかります。しかし、人工内耳を装着するのとしないのとでは、圧倒的に生活に質に差がでますので、絶対に装着すべきだと思います。


しかし、人工内耳その物の認知度が非常に低いので、聞こえを諦めてしまう方が多いです。人工内耳が広く認識されるようになることを願わずにはいられません。
 
 
 
【 出典 】聞いて納得!! 医療最前線
 
 
 

 
 
 
 
 
■今回のテーマ「人工内耳」


「本池美香さん」

みなさんおげんきですか?本池美香です。

何らかの原因で聞こえなくなってしまった人に聞こえを取り戻す治療方法の一つとして、人工内耳があります。今回は人工内耳がテーマです。教えて頂くのは鳥取大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科 頭頸部外科 矢間敬章医師です。矢間先生は、中耳炎や難聴などの耳の疾患の診療や手術を行っています。




■人工内耳とは?


「本池美香さん」

矢間先生よろしくお願いします。



「矢間敬章先生」

よろしくお願いします。



「本池美香さん」

今回は人工内耳について教えて頂きます。先生早速なんですが、人工内耳という言葉は聞いたことがあるんですけれども、実際どのような器具のことなんでしょうか。



「矢間敬章先生」

人工内耳はですね生まれつき聞こえない方、もしくは徐々に難聴が進んでいて、そういう方に対して補聴器がうまく使えないようになった場合、音を取り戻す唯一の医療器具です。



「本池美香さん」

そうなんですね。人工内耳を知っているか聞いてきたVTRがありますので、先生一緒に見てみましょう。



「矢間敬章先生」

はい。




■人工内耳に関する街の人の声


「質問」

人工内耳ってご存しですか?。



「街の人の声(1)」

知らないです。聞こえるようにするものとか、そんな感じですかね。



「街の人の声(2)」

耳の聞こえが悪くなった人が(器具を)中にうめこんで、音の反響で頭蓋骨に伝わって聞こえてくるってことなんでしょうかね。



「街の人の声(3)」

知らないです。耳の状態が取り戻せるものがあると便利だなと思います。



「街の人の声(4)」

知りません。初めて聞きました。



「街の人の声(5)」


聞いたことはありますけど、実際自分の耳は(異常がないので)



「本池美香さん」

皆さんの意見を聞かれて率直にどう思われましたか?



「矢間敬章先生」

人工内耳という響きでイメージは皆さんお持ちのようなんですけど、実際には知らないし、考えたことがないって言われる方がやっぱり多いですね。


全国で人工内耳をつけている方は5000人以上いるということです。


当院でも10年前くらいから人工内耳の手術を手がけていまして、年に3人ぐらいの患者さんに手術を行っています。


人数としてはまだまだ少ないですけれども、やはりこういう機器があって音を取り戻せる手術があることを皆さんに知ってもらいたいですね。




■人工内耳によって聴力が取り戻せるメカニズム


「本池美香さん」

では、人工内耳をよく理解するために聞こえのメカニズムについて教えて下さい。



「矢間敬章先生」

まず、外耳、中耳、内耳という部分に分かれます。


外耳は耳たぶと耳の穴「外耳道」ですが、音を集めてきて、中耳で鼓膜、耳小骨という部分を通して音を増幅して内耳に伝えます。


内耳まで伝わってきた音は蝸牛というところで電気信号に変わって、その電気信号が聴神経を伝わって、脳の方に聞こえの器官で音を感じることができます。


どの経路においても、どこかに障害があれば難聴ということになります。




■難聴の種類


「矢間敬章先生」

難聴の種類ですが、まず伝音性難聴と感音性難聴と、あと伝音性難聴と感音性難聴が一緒になった混合性難聴という種類があります。


まず伝音性難聴ですが外耳や中耳が正常にきのうしないものをさします。


例えば中耳炎であったり、耳の鼓膜のところに穴があいている病気になりますけども、この場合は飲み薬や手術で改善することがあります。


一方、内耳が正常に機能しないものを感音性難聴といいます。


これは内耳の蝸牛もしくは聴神経やその音を感じる脳の部分が上手く機能しないものをさします。


この場合は補聴器が上手くつかないことがあり、その場合に人工内耳が適応になってくることがあります。



「本池美香さん」

どのくらいの程度の難聴で補聴器や人工内耳が必要となってくるんでしょうか?



「矢間敬章先生」

はい、軽度から高度の難聴の幅の場合は、音を大きくする機器、いわゆる補聴器ですね、こういったものを使ってもらえば音を大きく聞き取ることで会話ができることもあるんですけれども、補聴器を使っても上手く聞き取れない場合は人工内耳の適応になります。


殆ど聞こえなくて、補聴器も使えない方に人工内耳が有効ということなんですね。



「本池美香さん」


殆ど聞こえなくて、補聴器も使えない方に人工内耳が有効ということなんですね。



「矢間敬章先生」

はい、そうなりますね。




■人工内耳について


「本池美香さん」

では先生、人工内耳についてより詳しく教えて頂けますか?



「矢間敬章先生」

はい、こちらを御覧ください。この耳にかけているのが電波をおくる送信機になります。


中に今光っているところがコイルでして、この発信機からコイルに電波が送られて、その電波を読み取った送信機が電流をずっと伝えていくわけです。


電波が電気信号に変わって蝸牛の中に送られてきます。ここで刺激をおくられて聴神経から脳の方に電気信号が伝わるようになります。


人工内耳の電極を完全に埋め込むので手術が必要になります。手術は全身麻酔でだいたい3時間くらいかけて行います。


ただ手術の侵襲(医療処置での傷など)の大きさはかなり小さいので、小さなお子さんから、お年をめされた方、全身麻酔が可能な方であれば皆さんに受けていただくことができます。


外につけるものは、これなんですけども、これは実際に音を拾って、コイルから電波を送る機器になります。



「本池美香さん」

好みで色を変えることも可能なんですね。



「矢間敬章先生」

そうですね。外側にカバーをつけることでいろんな色を楽しむことが出来ます。


この機器の性能自体もどんどん進歩していってますし、またファッション性やデザイン性、あと、防水性も気にされる方も多いので、そういった面でも色々な手が加わってきている状況です。




■人工内耳装着後について



「本池美香さん」

人工内耳を装着した後はどんなことをするのでしょうか?。



「矢間敬章先生」

実際に入院中は、傷を治すことに専念するので(調整などを)することはあまりありません。


外来に来て音質や音の大きさの調整をしなければいけません。


これをいわゆるマッピングといって、これを何度か繰り返すことによって、実際にその人にあったような使い方ができるように調整をしていきます。




■人工内耳のマッピングについて


「本池美香さん」

マッピングという音質調整をどのようにするか先生に教えて頂いたVTRがありますので、御覧ください。マッピングという音質調整をどのようにするか先生に教えて頂いたVTRがありますので、御覧ください。



「矢間敬章先生」

実際のマッピングを調整するのは、このコンピューター1台でやっています。


内容はどうなっているかというと、今ここの手元に持っているのが頭の中にうめこまれるインプラントと呼ばれる電極です。


そこに外側の機器、プロセッサが磁石でくっついています。


ここから電波を流して電流を流すわけなんですけど、一番先端が1番の電極となって、2番3番4番と続いて全部で12個の電極があります。


ここの画面に1から12までの番号がふってありますが、電極に対応した数字になりますけども、1番は先端の電極になるので低い音が流れます。


根元にいくに従って高い音になるので、12番の音をだすとこのように少し高い音がでます。1番から12番まで音の大きさの程度を合わせていきます。


「やや大きい」から「大きい」ぐらいの音の大きさに全ての電極を合わせて音の調整をして、どのように聞こえるかとか、音の感じはどうかを確認して実際に家に持って帰って使わせてもらいます。




■人工内耳の性能について


「本池美香さん」

人工内耳をつけた場合ですね、どこまで聞こえるようになるんでしょうか。



「矢間敬章先生」

実際には正常な状態のときに聞こえてた音を想像される方が多いですけれども、はじめのうちは電子音でしか分らないですけど、ずっと使っていって会話を続けていくことでこれまで聞こえていたような音、これまで聞こえていたような声に近づいていくようですね。



「本池美香さん」

試してみたいなと思う方もいらっしゃると思うんですけども、実際どういった方ができるものなんでしょうか?



「矢間敬章先生」

そうですね、実際に手術ができる方、出来ない方はやっぱりおられます。


一番大事なのは、それをずっと使い続けて音を聞くことが大切です。


それに慣れていくことで、色々分からなかった音が急にわかるようになったりとか、人の話がより良く聞こえるようになったり、聞こえが取り戻せるようになったから、じゃあ少し外に出て友達と話してみようかとか、いろんな所に出かけてみようかとか、そういう社会参加への動機付けにもなっていくんですね。


そういう風に個人の利益だけではなくて、やはり周りの人、家族や友達からも声をかけたら反応があるとか、おしゃべりをしていても、ちゃんと受け答えができるので楽しいとか、そいういう周りからも効果が認められる道具になっています。




■人工内耳の治療費について


「本池美香さん」

気になるのが治療費なんですけど、いくらくらいかかるものなんでしょうか?。



「矢間敬章先生」

実際にですね、この器具と治療費を合わせると非常に高額になるんですが、健康保険が使えますので、高額医療ということで、実際にご負担頂くのは10万円程度になります。


また、お子さんにはさらに補助があるので、もっと安い金額ですることができます。


ただ問題なのは、機器が壊れたり、紛失した場合に交換することが出来ないんですね、実際にご負担をして頂かないといけなくなります。その点が問題です。


これから装用者が増えて人工内耳の知識が広まっていけば補助だったり、負担を軽減するような運動や法整備ができると思いますので、どんどん広く皆さんに知っていただくことが大切ですし、また聞こえのことについて何かこまったこととか、ご相談がありましたら外来の方に来て頂いてご相談ください。




「本池美香さん」

先生本日はありがとうございました。


今回は人工内耳について教えて頂きました。


聞こえを諦めている人が人工内耳を使うことにより、聞こえを取り戻す可能性があることを広く知っていただきたいですね。