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■今回のテーマは「重症心身障害児の在宅支援」


今回の動画は「重症心身障害の在宅支援」がテーマです。鳥取大学医学部付属病院 脳神経外科小児科 前垣義弘教授により、在宅支援を取り巻く環境について解説しています。


重症心身障害児の方のほとんどが日常生活で健常者が行っている当たり前のことが全くできないため、24時間体制で介護が必要となり、その大半をご家族の方が行ってます。


そうした状況にありながらショートスティなどの介護を支援するサービスを利用して何とか最低限の自分の時間が持てる状態なので非常に大変な状況で介護を行っています。


こうした施設が地方では特に不足しているので、周囲の人たちの理解がなければ行政や政府を動かすことはできないため、現場で働く医療従事者の方も強く理解を求めてます。


重症心身障害の方々の介護は高齢患者さんの介護とはまた違った難しさがあり、患者さんの数は依然として増えているので、少しでも施設の数が増えることを願ってやみません。
 
 
 
【 出典 】聞いて納得!! 医療最前線
 
 

 
 
 
重症心身障害児の在宅支援


「本池美香さん」

 
みなさん、お元気ですか。本池美香です。


重度の障害がある子供を持つ家族にとって、症状の変化は不安なものです。どのようなケアが必要なのでしょうか、詳しくは先生に伺います。


今回は重症心身障害児の在宅支援についてです。教えていただくのは鳥取大学医学部付属病院 脳神経外科小児科 前垣義弘教授です。


前垣先生は神経に関わる難病の診療や在宅支援など幅広く活動されています。




重症心身障害とは?


「本池美香さん」

前垣先生よろしくお願いします。



「前垣義弘先生」

よろしくお願いします。



「本池美香さん」

今回は重症心身障害児の在宅支援について教えて頂きます。まず先生、重症心身障害とはどのような状態であるのかこちらのフリップを使って教えて下さい。



「前垣義弘先生」

はい、重症心身障害児というのは小児期に何らかの原因で重い脳に障害を負った子どもたちで重い運動機能障害と知的障害が併せ持ったそういう状態の子供さんたちのことをいいます。


原因は沢山あります。例えば生まれつきの脳の病気の場合もあります。それからお産のときに脳に血液が行かなかったり、酸素が行かなかったり、っていうような場合もあります。


それから生まれたあとに脳炎だとか髄膜炎だとか、あるいは交通事故のような脳の外傷、そういったものが原因でなる場合もあります。


ですので、重症心身障害というのは、病名ではなくって、状態を指す言葉であります。




重症心身障害の障害の特徴とは?


「本池美香さん」

どのような障害がある方が多いんでしょうか?。



「前垣義弘先生」

はい、運動障害としましては、自分で立ったり、座ったり、移動したりっていうふうなことができにくいことが多いです。


知的障害としましては、自分で家族と十分会話をするとか、そいういうことが難しいことが多いです。



「本池美香さん」

やはり、障害の程度によって出来る出来ないということが変わってきますか。



「前垣義弘先生」


そうですね。障害の重い子供さんの場合には自分でご飯を食べたりとか飲み込んだりとかっていうことも難しい場合もあります。


中には呼吸をする能力も難しいことがありますので、そういう子どもたちは呼吸器を使ったりします。




「本池美香さん」

なるほど。そういう方たちっていうのは、鳥取県内にどれくらいいらっしゃるんでしょうか?。



「前垣義弘先生」

おおよその概算ですけども、だいたい100人前後じゃないかと思います。鳥取大学で今50人くらいの患者さんを診ております。




重症心身障害の生活面での変化とは?


「本池美香さん」

その重度の障害を持った子どもたちというのは、どのような生活を普段送っていらっしゃるんでしょうか?。



「前垣義弘先生」

少し前まではこういう重度の子供さんというのは施設に入所しておりました。ところが最近は7割から8割の子供さんがお家で生活しております。


ご家族が子供さんの介護をほぼ全て行っているというような、そういう状況です。



「本池美香さん」

なるほど。そうなんですね。



「前垣義弘先生」

在宅の中で大事な点としましては、食事だとか排泄だとか、あるいは呼吸だとか、ということになります。食事が一人で取れませんので、食事を与えてあげる。


飲み込みの悪い子供さんの場合には、鼻、あるいは胃ろうと言って、胃に穴を開けてそこからチューブで栄養を入れるっていうふうなこともします。


それから呼吸が不十分な子供さんは自宅で酸素が行ったり、あるいは簡易型の人工呼吸器を自宅で使うというようなこともされております。





障害児への支援について


「本池美香さん」

そうするとやはり必要となってくるのは支援の部分だと思うんですが...



「前垣義弘先生」

そうですね。大人ですと訪問診療、それから訪問看護、リハビリテーション、それからヘルパー、そういった地域の色んな支援っていうのが使えます。


ところが子どもに対応しているそういう人材、あるいは事業所っていうのは、少ないそのために現状としましては、その子供さんのケアというのはほとんどが家族がまかなっております。



「本池美香さん」

ではここで、重症心身障害児が家族にいらっしゃる方のお話を聞いてきました。


こちらのVTRをご覧下さい。




重症心身障害児を持つ家族の厳しい現状とは?


「本池美香さん」

重症心身障害のお子さんを持ち、在宅医療をされている米谷さんと上田さんにお話を伺いました。お二人は重症心身障害児の理解と医療支援向上のための様々な活動もされています。


「質問」

重症心身障害児の在宅医療は?



「上田さん」

極端に言うと(健常者は)鼻水がでたら鼻をかむことができるけれど、それも本人たちには出来ないので、もちろん寝返りもできないし、全て24時間、私たちなりヘルパーさんや、色々な人に助けを借りて1日が過ごせるって言う形です。


そこをやって下さる事業所がないので、実際問題親が1人で24時間(介護を)やっています。今まだ大変な状態ではあります。



「本池美香さん」

米谷さんのお子さんは病院での入院と在宅医療を繰り返しています。


お子さんは生まれつきの脳性麻痺があり、現在35歳です。



「質問」

重症心身障害児への理解は?



「米谷さん」

感じますね。それは重たい障害なので、私たち親にしか(介護を)できないと思い、抱え込んでいたという歴史があると思います。


もっともっとこの子を1人でも多くの人に知ってもらいたいと私は思っています。


それが理解に繋がるかなと、隠すわけじゃないですし、やはり、この子を1人でも多くの人に知ってもらいたいという気持ちです。そこが大事かなと思います。




重症心身障害児を取り巻く環境とは?


「本池美香さん」

先生は普段診察をしておられて、普段どういったことを感じていらっしゃいますか。



「前垣義弘先生」

そうですね。現在はどうしても家族がほとんど子どものケアをしていると、そして家族も非常に疲弊しているっていうのが現状です。


そこを訪問看護だとか、ヘルパーだとか、あるいはショートスティだとか、そういった社会資源が充実することによって、家族が余裕を持って、そして、安心して暮らしていけるという、そういう地域の仕組っていうのが出来るといいなと常に思っています。




重症心身障害児への支援について


「本池美香さん」

こちらどのような支援があるのか、フリップにまとめてみました。



「前垣義弘先生」

訪問診療といいますと、障害が重い、そのために移動そのものが大変なんですね。ですので、看護師なり医者がお家に訪問して子供さんの様子を診ていく、というのが訪問診療、訪問看護、あるいはケアをするのが、訪問介護ということになります。


それから手足がどうしても固くなったり、動かなくなったりしますので、自宅でリハビリテーションをするというようなことが今とても求められています。




ショートスティの重要性について


「前垣義弘先生」

ショートスティといいますのは、子供さんを一時的に預かってもらうということなんです。


例えば療育施設だとか、あるいは障害者の施設なんかに1泊とか2泊とか子供さんを見ていただいて、その間にご家族が休む、あるいはリフレッシュをする、それから他のお子さんを見てあげる


そういう時間を作るというために、このショートスティっていうのはとても重要です。これがあるから在宅で生活できるということが言えるんですね。




急性期医療とは?


「本池美香さん」

なるほど、そして、その一番下に書いてある急性期医療ということなんですが、これはどういったことでしょうか?。



「前垣義弘先生」

障害が重いですので、ちょっとした風邪をひいたことから肺炎になったりだとか、嘔吐して栄養が入らないとか、そういう状態にすぐなってしまうんですね。


ですので、体調が悪くなったら、すぐに病院で治療して、場合によっては入院して治療すると、そういうことが出来るのが急性期医療ということになります。


こういう在宅を支援するための呼吸器だとか、酸素だとかっていいましたけども、こういうことになれている看護師、それからヘルパー、こういった人材が実はあまり多くないんですね。


ですから、人材を育てていって、その人たちが在宅支援を担うというここが今非常に大事になっています。




今後支援する上で必要なこととは?


「本池美香さん」

その他にはどういったことが必要だと思っていらっしゃいますか?。



「前垣義弘先生」

このショートスティも非常にニーズが高いんですけども、ショートスティを行なう施設というのが限られています。で、使いたくても使えない、っていうようなことが非常にありますので、


ショートスティをする施設が増える、それから急性期医療もそうです。今我々がかなり見て回っていますけども、我々だけでは十分まかないきれないくらい今患者さんが増えておりますので、


それを色んな施設で診ていくというような方向にできるとさらに自宅で安心して暮らすということが実現できると思ってます。




医療機器の重要性とは?


「本池美香さん」

この医療機器っていうところも、使って生活されていらっしゃる方も結構あるんでしょうか?。



「前垣義弘先生」

在宅でこういう重症の子供さんが生活できるようになったというのは、呼吸器であるとか、そういう医療機器が非常にこう性能が良くなったっていうことと、自宅でも使えるような、


簡便になったという、機器の進歩というのは、非常に大きいです。




重症心身障害児とそのご家族にとって良い環境とは?


「本池美香さん」

重症心身障害児の方であったり、そのご家族っていうところの現状ですね、中々一般的には知られていない部分も多いんじゃないかと思うんですが、先生はそのあたりどう感じていらっしゃいますか?。



「前垣義弘先生」

医療の必要性だとか、それから介護の必要性っていうのは非常に高いです。ですので、こういう重症心身障害児の方々が自宅で暮らしていくというためには、


訪問していく医者であったり看護師、それからヘルパー、こういった専門職の方々が増えるっていうことも、とても大事なんですけども、例えば隣近所の方々が、


その子どもさんと家族をよく知っていて、街で会った時に声をかけてくれるとか、そういうことがあると、ご自宅で生活する上で暮らしやすいと思うんですね。


ですから、そんなふうな世の中になるといいなというふうに思っております。



「本池美香さん」

はい、先生今日はありがとうございました。



「前垣義弘先生」

いいえ、ありがとうございました。



「本池美香さん」

重い障害を持つ方々が家で過ごすためには、医療支援や周りのサポートが欠かせません。重症心身障害を持つ方たちへの理解が今求められていると感じました。



「前垣義弘先生」

重い障害を持った子どもたちが、ご自宅で安心して暮らすためには、それを支える専門職の方および地域の方々の理解が必要です。



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