はじめに
残念ながら依然として医師や看護師さんによる医療ミスがテレビや雑誌で報じられるケースが少なくありません。人の命がかかっているので、一度報じられれば批判の嵐です。
医療の現場では患者さんの命を預かっているので当然ミスは許されませんが、残念ながら医師の先生や看護師さんを責めたからといって解決する問題ではありません。
しかし、どんなに管理を徹底しても人間にできることは限られているので、絶対にミスをしないことを前提に看護業務を進めることはできません。
そんなことをすれば職場に配置されている看護師さん一人一人に余計なプレッシャーを与えてしまうこととなり、かえって致命的なミスが生じやすくなってしまうことでしょう。
もはや医療ミスによる医療事故は他人事ではすまされません。巡り巡って自分に回ってくる可能性もありえますので、自分が医療事故の当事者にならないよう注意が必要です。
今回は実際に病院で働いている看護師さんが起こしやすい「医療事故」について解説させていただきます。
自院のチーム医療がいかに優れているか強調しすぎている病院は要注意!?
医療事故の原因が分かれば対策も立てやすいわけですが、職場内で責任問題が追求されるとなると従業員の方々は本当のことを言いづらくなってしまいます。
中堅規模の病院であっても、医師や看護師さん意外に沢山の医療従事者が働いているので、それぞれの持ち場で目には見えない縄張りのようなものが出来てしまいます。
医療機関だけでなく、一般の会社でもこういったことはよくありますが、これが他の部署との連携を著しく悪化させてしまっている原因です。
チーム 医療が浸透しているといっても、どうしても部署ごとに力関係に差があるので業務に歪が生じてしまい、そのつけを現場の最前線で働く従業員が背負う形となります。
このため、テレビなど大手メディアで取り上げられるような事件に発展しないかぎり、歯がゆいですが問題の本質を上層部で検討されるまでには至りません。
こうした点も組織としては問題ですね。いずれだれかがババを引くのをまっているような状況では、怖くて働けませんので、いたずらに離職者を増やしてしまいます。
上層部の人間が業界紙などで自院のチーム医療がいかに優れているか強調しすぎている病院は、現場で生じている問題を把握しきれていない可能性が高いので要注意です。
医療事故に発展しやすい看護師さんの仕事のミスとは!?
医療ミスや医療事故が起こる度に医師や看護師に批判が殺到するように仕向けた報道がなされますが、それだけではこの根の深い問題は残念ながら解決しません。
誠に心苦しいですが次に看護師さんが起こしやすい医療ミスや医療事故を中心に以下のとおりまとめさせていただきました。
(1)「与薬」
看護師さんの仕事は膨大な雑務をこなしながらミスが許されない重要度の高い仕事をこなさなければならないわけですが、中でも与薬によるミスは医療事故につながりやすいです。
単純に取り扱う薬を間違えるといったことも問題ですが、それ以上に薬の量を間違えてしまうことによって医療事故に発展しやすいです
また、患者さんに与薬を禁止されている薬を間違えて投薬してしまうケースも良く見られます。
(2)「患者さんを看護しているときに起こるミスや事故」
一期一会とはよく言ったものですが、病院には毎日沢山の患者さんが訪れます。患者さん同士姿形が似ている人も多く、日によっては似たような人が集中することすらあります。
言い訳にはなりませんが、その日対面した患者さんを覚えていられるような優れた記憶の看護師さんは稀です。ですので、看護師さんの多くが何らかしらの心配事を抱えています。
「あれやったっけ?」「次どうするんだっけ」といった具合に、あれこれ心配しているうちにミスや事故を起こることがあると看護師さんであれば誰もが身に覚えがあるはずです。
コンプライアンスが厳格化が進んだことにより、他人のミスを社会全体が許せなくなっています。例えば「患者さんの爪」を深爪させてしまうことだって人によっては大問題です。
クレーム次第では、この程度のことであっても立派な医療事故としてカウントされます。同じような理由で床ずれの処置も間違えてしまうと医療事故につながるので注意が必要です。
さらに、どこの病院も高齢患者が増えているので食事や入浴など生活面で患者さんを介助しなければならないことも少なくないわけですが、命の危険性にさらされてしまう場合もあります。
例えば入浴介助をしているときにお湯の設定温度を間違えてしまったり、食事の介助をしているさいに誤嚥させてしまうケースも決して珍しいことではありません。
(3)「患者の取り違え」
手術をする患者さんや生まれたばかりの赤ちゃんを取り違えてしまうといった傍から見れば考えられないミスが、どこの病院でも事故として報告されています。
これは業務に関するシステムに問題がある場合が圧倒的に多いので、直接業務にあたった看護師さん一人だけの責任ではありませんが、責められるのは看護師さんだけです。
確かに患者さんと一番多く接しているのが看護師さんなので、医療事故に発展してしまう前の段階で防ぐこともできたかもしれません。
ただし、人手不足が深刻な職場環境で責任の重い仕事を一人の看護師さん(特に入職してから日が浅い)に押し付ければ医療ミスや医療事故が起こらない方がおかしいです。
終わりに
残念ながら日本の組織は中から変わることが中々できません。
外からの力が入って変わることが極めて多いので、そうならないように職場内の連携が図れる体制を整え、常に状況に応じて改善できるようにしなければなりません。
そのためにも患者さんの声を大事にしてください。そうすることで致命的なクレームも減るばかりでなく、業務全体の改善策につながるヒントのようなものを与えてくれます。
こうした取り組みは、まず現場の最前線で働いている看護師さんがしっかり患者さんの声をヒアリングし、上層部に進言していかなければなりません。
これが逆だとまず上手くいきません。現場の状況を無視した働き方を強いられるだけです。
こういったことは看護師さんをはじめ現場の最前線で働く人たちにしかできないことですから、医師や看護師さんの人手不足が深刻な医療の現場では今後さらに看護師さんという存在が重要になることでしょう。